「・・・・・・・川田さま。川田さま」
「・・・ふ、ふぇ?」
「以上で終了でございます。」
「・・・・へ?・・・・・・あ、あーそう。う、ウーン・・(伸びをする)」
「わたくしのお話、ご理解頂けましたでしょうか?」
「へ?・・・・あ、あー、ウン。ウン。分かった分かった。つまりあれやな。ワシに世界を救え、ちゅうて頼んでるんやな」
「さようでございます」
「なるほどなるほど。えー、ほ、ほ、ほんで、そのー、あんたがくれるその剣と盾を使って、悪いやっちゃを懲らしめたらええんやろ?」
「さようでございます」
「ほ、ほんでや。・・・アレや、あ、あのー・・。一番肝心な、その、大変言いにくい事なんやけど・・、そのー、でっかい大物やっつけたら、そのー、なんちうか、その、女神さまと、・・・なんちゅーか、ごぞごぞ出来るゆう話・・」
「さようでございます」
「女神さんとワシの内緒の約束やね」
「さようでございます」
「ワシに任せてください!必ずや悪者を退治してきます!・・・・・では!」
「お待ちください」
「・・・・?まだなんかありますんで?」
「剣と盾でしめて合計15000円(税込)になります」
「・・・・は?!これ金取るんかい!」
「申し訳ございません」
「・・・・・・・・・ちぇっ。ったく、ぼろい商売しよんなー。こちとら頼まれてやってんのに。ワシが受けんかったら誰が受けるっちゅうねん、こんな阿呆みたいな依頼。ええ?・・・・・・くそっ。世界救うなんて、大変なことやねんぞ。・・今月ワシ厳しいのになぁ。まぁでもしゃあないな。この冒険終わったら、こんな美人さんと、あんなことやこんなことが出来るんやったら・・うふふ・・・・。おっし。なんぼでも悪いやつ、ワシにかかってこんかーい!!!よっ!ホラ!ここにお金置いとくでぇ!!」
「ふふ。頼もしいお方」
「当たり前じゃい!若い頃は浪速の虎ゆわれとったんじゃい!」
「それではまず最初にこの国の王さまにお会いください」
「はいよー!」
***
「すんまへん」
「いらっしゃい」
「あのー、ここ大阪城でっか?」
「そうですけど。あんたどちらさん」
「王さまいてはる?」
「今ちょっと出てってまんねん。なんや王さまがこれで(酒飲むしぐさ)
これがこれやそうで(小指立てるしぐさ、鬼の角のしぐさ)」
「あらー。そりゃえらいこっちゃ」
「昨日も新地で飲んでまんのやで。ほんまに、ウチの王さまには呆れるわ。ちゃんとこの国を導いてくれなあかんのに。さすがにとうとう嫁が呆れてしまいましてな、ほんで実家に帰ってもうたんですわ。ほんで今朝から王さまも嫁さん追っかけて実家に帰ってるんで」
「ごしゅうしょうさんで」
「ところであんた、誰やっちゅうに」
「あ、これは失礼致しました。ワテ川田言いまんねん。王さまに会うてちょっと直接話ししたいことがありましてな」
「ほー。それは急用なこって。せやけど、すんません。王さまは今日帰ってくるかどうか・・。嫁の実家が九州の田舎でしてな。」
「あー、さいですかー。・・・・・・ちょっとこれは困ったなぁ。(まぁ、行く当ては女神さんに大体教えてもうてるし、別に王さまに会わんでもええねんけどなぁ)」
「・・・・・・・?・・・もし」
「・・・・・なんですか?」
「その剣と盾、あんたどこで買いなさった?」
「・・・・え、こ、これでっか。えー、えーっと、・・・・うーん、こういう事は、ゆうてええもんかいな。やっぱり女神とか精霊ゆう存在は、内緒にしといた方がええんと違うやろか。はて、どうしたもんか・・」
「阿弥陀が池の女神にもうたんとちゃいますか?」
「!?・・・・・・・なんで分かったんですか」
「いや、正確には買うたんと違いますか」
「そ、その通りでございます」
「それで、この世界を救えゆわれたんとちゃいますか?」
「な!あんたなんでそこまで分かってなはる」
「・・・・・・・・・・・ハァー。」
「な、な。なんだんねん。その激しいため息は・・・」
「今週入ってあんたで九人目でんねん」
「は?」
「今週だけで九人目ですねやわ。世界救いにきた人」
「は?」
「いやだから、あんたが来やはる前に、もうすでに八人、来てなはるんですわ、うちに。そのー、何や。ゆ、勇者、ゆうやつか?」
「は?!」
「いやね、最近なんか多いなー思ててね、私も。いや、そりゃ、たまーにはいますよ。たまーには。それこそ、そうやなぁ、五年に一人おったらええ方とちゃいますか。あれですわ。そういうサイクルがあるんですわ。」
「・・・と、いいますと」
「いやいや、あのー、そりゃ、悪者の人たちおりまっしゃろ。世界を混乱に陥れる。はぁ。そうそう。世界を恐怖のどん底に陥れる、悪い悪魔いてるがな。うん、その人たちもね、なんも、ものすごい力持ってる分けではないんですよ。ほやからね、悪魔さんが世界を大混乱さしたときには必ず勇者が現れるんですけども、それこそ勇者は、悪魔が仕込んだ仕掛け、全部めちゃくちゃにしよるんですわ。ほんでね、めちゃくちゃにされたらね、アレね、なんも、悪魔がウーンゆうて、念力かなんかで、全部復活させよんと違いまっせ。」
「そうなんですか」
「そうや。あれね、勇者が壊した仕掛けとかいろいろありますがな。そういう壊されたモンをですね、まず現地調査してやな、ほいでそれを踏まえてね、悪魔の大将の人と、その下の近衛兵とか六魔人とか、そういう人らがおりますがな。あの人らがね、まず、設計から始めてね、ほんで、設計書が出来たら東大阪に指示出してやで、ほんで東大阪の中小企業の皆さんに頼んで、新たな仕掛けの施工に入るんですがな」
「ほー、ワタシ、そういう話、初めて聞きました」
「そうですよ。あの人たち皆一級建築士の資格持ってまっさかいな」
「建築士ってメチャクチャ難しいんとちゃいますの」
「そりゃもう、メチャクチャ難しいですよ。ほやけどね、こうやって頑張ってる側面は、メディアに放送されへんのですよ」
「許せませんな」
「おっしゃるとおりで」
「でも、王宮勤めのあんたがそないなことをゆうたら、立場上、具合悪いんちゃいまっか」
「あ!・・・・この話はまぁ、聞き流しといてください・・。まぁ、ほやからですね、何が言いたいかと言いますとね、一回勇者が壊したら、悪魔側さんが施工し直さなアカンからね、悪魔の国の建て直しが出来上がるまで、結構時間がかかるんですわ。ほいで、悪魔さんらが街を襲いにかかり始めるのは、それから、っちゅうね」
「なるほど。だから、その準備出来るサイクルがだいたい五年くらいですねんな」
「そうです。ほいでね、今年はね・・」
「そのサイクルではないと」
「そうですねん。今年はまだ、悪魔建築が完了する年とはちゃうはずやねんけど・・。今の時期に勇者が現れる事自体おかしいんですわ」
「・・・・アレ。せやけど、もうひとつ疑問があるんですが・・」
「なんで」
「あのー、ワシが来る前に今週すでに八人勇者さん方が来たゆうてましたけど・・。勇者ってそないにおるモンなんでっか?」
「それも謎ですねん。ワタシ、ここの番頭になってもう40年くらいになりますけどな、未だかつて勇者が複数おるなんて記憶にありませんわ」
「さいですか・・・。どういうことなんでしょう?」
「・・・いや、わたしにも分かりかねますわ。」
「そうですか・・・。なんや、よう分からんことになってきましたなぁ・・」
「まぁ、ワタシが知ってることはこれくらいですわ。」
「はぁ。・・・・・分かりました・・まぁ、ほな、適当に行ってきますわ。はい、有り難うございます、ほな」
「あー、ちょい待ちいな、そういえば、なんか、別のモンが今朝方、勇者来たやなんや、ゆうてたの思いだしましたわ」
「さいですか」
「ちょっと待ってくださいよ。おーい!タケー!!!おーい!おまはん今日勇者さんいらしたゆうてたなー」
「・・・・」
「ちょっとこっちこんかーい!・・・・・・・・・・おう、こっち来い。おまはん今日、勇者来たゆうてたがな、それ何時くらいか分かりますか?」
「はい。朝の十時くらいです。」
「どこに行くとか、なんかゆうてはりましたか?」
「王さまが留守ってゆうのを教えますと、そうですか、ゆうて、どっか行きはりましたわ。・・・・たしか、ミナミの方やと思います」
「はぁ、そうですか。・・なんやあんまりええ手がかりにはならんみたいですな。すんまへんなぁ」
「いえいえ、自分とおんなじ人間がいたゆうのは、手がかりにはなりますわ。どうも、ありがとうさんで。ほな!」
「お気をつけて」
「・・・・・・・・・・・へー。なんやなんや、一体どういうこっちゃ。えぇ?ワシの他に勇者があと八人も居てるのかいな。なんやそれ。えぇ。ほな、もう先に行ったそいつらが、悪魔王倒してもうてるかもしれへんやないか。えぇ。どういうこっちゃ。ほな、ワシ別に勇者にならんでも良かったんと違うんかい。よーわからんなぁ。ハテ。これからどないしよう・・。・・・・まぁでも、一回引き受けてもうたんやから、とりあえずは悪魔王の家まで行くとしよかな・・。ここにちゃんと地図があるんやさかい。えーっと、ふんふん、これによるとやな、えー、悪魔城は、平野区にあるゆうことやな。てことは、今日旅立った勇者もとりあえずはミナミに下った、ゆうことやな・・・。よっしゃ、とりあえず、悪魔城めざしましょ!」
「ちょっとすんまへん」
「はい。なんでしょう」
「あんた、もしかして、勇者さんでっか?」
「はぁ、そうですが・・。あんたは?」
「・・・・・・えー、恥ずかしながら、ワタシも勇者ですねん。」
「は?!」
「わたし、望月、言います」
***
「え、一体どういうこって・・」
「いや、せやから、わたしも勇者でんねん」
「はぁ、ほたら、あんたも女神さんに頼まれたんですか」
「そうですがな。」
「剣と盾」
「15000円(税込)は高いですがな」
「まったくですわ。え、と言いますと、あんさんも勇者のうちの一人、ゆうことですか」
「まぁ、多分そういうことになると思います」
「多分?」
「はぁ。いやいや、まぁ、あの美人の女神さんに頼まれましてな、世界を救えとかゆうて。丁度今朝、仕事行く前ですわ。阿弥陀が池の近くを通りましたらな、声が聞こえてきましてな・・・」
「はぁ、それ、わたいの場合と全くおんなじですわ」
「はい。それでですね、あとは、なんや「勇者が世界を救う」とかゆう実習ビデオ見せられてね、まぁ。なんといいますか、ちょっとその気になって来たんですけど・・」
「あはぁ、これは魂消た。ほんまに今朝のワタシとおんなじですわ、望月さん。あ、失礼、わたし、川田と言います。」
「どうも、こちらこそよろしく願います・・・。いやね、この手口に引っかかったのん、実は、わたしらだけとちゃいまんねん。他にもぎょうさんいてます。」
「はぁ、それはまぁ、聞いてますけど・・」
「おかしいや思いませんか?」
「へ?何がですか?」
「いやいや、勇者が何人もおるゆうことですがな」
「え、はぁ。いやー、まぁ、ウーン。どうなんでしょうな。ワタシにはよう分かりませんのやけど・・まぁ、そういうこともあるんとちゃいますか?」
「あのね、実はですね。わたし、もうすでに何人かの勇者とおうてますねん」
「え、そうなんですか!?」
「はぁ。ほいでね、先行した勇者の人たちに、事のあらましをね、大体聞いてきましたんや。ほしたらね、ちょっと、色々分かってきましてん」
「何が分かってきましたの?」
「はぁ。あのね、最初に先行して行った勇者の人たちね。すでに五人集まってたんですわ。今週の話ですねん。ほんでね、女神さんに言われたとおり、平野区の悪魔城に行ったんですって。ほしたらね・・」
「はぁ」
「案の定、まだ全然悪魔城できてませんでしたのや」
「あらま。そういえば、大阪城の番頭さんが、なんやゆうてはりましたな。施工サイクルがあるゆうて」
「そうですねん。地図にある平野区の悪魔城に行ってみたらしいんですけどな、ほしたらね、そこにはプレハブの小屋が一つあっただけなんですって」
「あらまぁ」
「ほんでね、なんやおかしいな思たらしいんですけど、とりあえず入ってみたらね。中に悪魔王とその部下の人らがおったんですって。ほいで、自分らが来たあらましなど、詳しい事話してみると、やっぱり悪魔城はまだ完成してないどころか、施工にも入ってないゆうんですわ。悪魔王が、もうちょっと待っておくんなまし、ゆうて、勇者方に頼んでお引取り願ったゆうね。どうやら、そういう話みたいですよ」
「おいおい、なんやえらいこっちゃでね」
「それでね、一つ興味深い話があって最近、ここニ三ヶ月、こうやって、間違った時期に来る勇者が多いんですって」
「はぁ。と、言いますと…」
「いやね、今まで、通常はですよ。勇者ってのは、世界が混乱に陥ったときに出現するモンですがな。つまり、世界が危機に瀕した後、要するに、勇者ってのは、世界の危機ありきの存在なわけですよ。」
「はぁ、なるほど」
「それはいつの時代もそうです。過去の歴史を紐解いても、これに反した勇者の例はないわけです。それやのに、最近は世界が危機でもないのに勇者がいるのがおかしい。川田はん。あんたやワタシみたいな連中ですわ」
「・・・たしかにそう言われてみますと、オカシイですわな・・。たしかに、世間の皆さんは普通どおり、学校行ったり仕事行ったりしてるのに、ワタシらだけ剣と盾持って世界を救うとか言うてるの、冷静になってみると、恥ずかしいですわな・・」
「そうでしょう。おかしいんですわ。・・・・・・ところで川田はん。ちょっとあえて聞いて見ますけど、あんた、ホンマに世界救おうと思うて、持ち前の正義感でもってこの依頼を受けなはったんですか?」
「へ?ど、どういうことでしょう・・」
「いやいや、なんと言いますか、この女神さまの依頼を受けなはったのは、なんや違う動機があったからなんと違いますか?」
「な、な、・・・・・・な、何を言うてるのか、わたしにはサッパリ・・」
「いやいや、別に隠さいでもよろしいやないですか。・・・あれやないですか、川田さん。あんた、女神さんと、ちょっといやらしい約束とかしまへんでしたか?」
「え・・・・・え、え、いやー、あーっと」
「何をええ年こいて恥ずかしがってますのんや。いやいや、それあんただけと違いますねん。わたしら皆、そういう約束してますねん」
「へ?!・・・・と言いますと、・・・・その、悪魔の親玉やっつけたら、あの美人の女神さんとあんなことやこんなことを・・」
「はぁ。そうですがな」
「え、あれ、わたいと女神さんの約束・・」
「いえいえ、あの約束、皆とやってますのやがな。あの女神さん」
「な、なんですってー!・・・・い、いやらしい女神さんやってんな、あの女。ワシとだけの約束とか言いながら・・」
「いやいや。あんた、なんかピンとがずれてますがな。そろそろ分かってきてもええと思いますねんけど。」
「へ、何がいな?」
「悪魔さんの方も、近頃勇者が尋ねてくるようになって、ちょっと難儀してるらしいのやがな。やっぱりあの人らはサービス精神旺盛やからね。ウチに来客がきたら、ただでは帰らさへんように、色々と楽しませようとしてくれるのやがな。ほいでね、そのせいで、悪魔城の設計がちょっと遅れたりしてて、困ってるんやって」
「はぁ」
「カー。あんた、まだ分からへんのかいな。つまりですな、悪魔さんの方も困ってるんですわ。ほんで、わしら勇者はどうですのや?やっつけるべき悪魔さんは居てへんのやで。にも関わらず、15000円払たがな。」
「あ、たしかに!」
「わしら勇者も損してるのですわ。ね、勇者側も悪魔側も、困ってる。一体この戦いは誰が得するんです?」
「・・・ウーン。そうですな、たしかに・・・なんなんでしょうな、わたいらがやってること・・」
「ほな、もうちょっと簡単に言いますがな。川田さん、あんたはなんで勇者になろうと思たんですか。ほんで、誰に損させられましたか?」
「・・・・。えー、そうですな。えー。わたしは、女神さんがごそごそしてくれるゆうて約束してくれたから、世界救うことにしました。えー、ほんで、女神さんから剣と盾を15000円で買いましたけど、どうやら無用の長物のようです。えー、女神さん・・」
「・・・・」
「女神さん!?」
「さいですがな。」
「・・・・め、女神さんがワルモンってことですか?!」
「はぁ。今までの話を素直に考えると、どう考えても、ええ位置におるのは女神さんですがな。なんでそんなことするんか理由はようわかりまへんけどな」
「え、え、なんでそんなことを・・・」
「さあねぇ。せやけど、悪魔を倒したら、ごそごそする約束までして、勇者と悪魔を混乱させようとしてるやなんて」
「ま、まさか・・そんな・・・ワイのごそごそが・・」
「とりあえず、ワシらがつきとめたんは、そこまでなんですわ。もう倒す悪魔が居てないもんやから、ほとんどの勇者の人は、諦めて戦いやめてまうんです。まぁ15000円まる損ですわな。ほやけど、わてら含めて、何人かは真相つきとめよう言いましてな。ほんで、先発の五人がまず悪魔さんと話してきてくれたんですねん」
「そうですか・・・・」
「・・・まぁまぁ、あんたの気持ちも分からんでもないけどな。わたしら皆そういう気持ちなんやし・・。気ぃ直しなはれ。ほんでな、ここからワテらの番なんやがな。」
「番と言いますと?」
「今からワテらが行って女神さんに詰め寄りに行きますのんや。・・と、ゆうても、もう先に別の二人が女神さんとこに出発してますよって」
「もう二人の別の勇者さんが?」
「そうです」
「そりゃぁまた。」
「そういうわけで、ほたらそろそろ、わたしらも行きましょうか。阿弥陀が池に」
「はぁ。了解です。ほなほな行きましょ。・・・はぁ、なんかよう分からんことになってきたなぁ・・」
***
「あ、川田さん、見てみい!今丁度、二人が女神さんに詰め寄ってるとこだっせ」
「ほんに!」
「・・・・・・・・ほな!アンタ、ほんまにそれだけの理由なんかいな」
「・・・・・はい・・・・・」
「かなんなぁ、ほんまに・・のう」
「ほんまに。まぁえらいことにならんで済んだけどやで」
「おーい、田中さんに長谷川さーん」
「おー」
「おー」
「どうもどうも。おー、やってまんな。ハイハイ。どうですか、具合は」
「上首尾ですがな」
「ほんまにこの女子、かないませんわ」
「ほほう。やっぱりこの女神さんが悪いやっちゃったわけやな。」
「ど、どうなりましてん」
「あ、田中さんに長谷川さん、こちら、今日新しく勇者になりました、川田さんです。」
「どうもどうも、川田でございます」
「田中です、どうも」
「長谷川です、まいど!そやけど、もう別にすることおまへんで」
「ど、どないなってまんの今?」
「いやいや、全部この女神さん、いや、どないゆうーたらええんかいな・・」
「あー、一応、お妃さまゆうた方がええんちゃうか」
「お妃さま?どういうこっちゃ一体」
「いやね、この人、王さまの奥さんなんや」
「は?!」
「奥さん?なんやて?奥さんて、たしか今実家に引っ込んでるんやなかった?」
「それですがな。この人、帰ってなかったんやわ。ウソウソ」
「は?なんじゃいなそれ」
「いや、そやからな、それもこれも、全部あれなんやがな」
「あれとは?」
「王さまに対する当てつけやがな」
「当てつけ?」
「そやがな。あのな、勇者を大量に出して悪魔にけしかけるんも、勇者からお金巻き上げるんも、全部この国、つまり王さまに迷惑かけるためにやったことやがな」
「迷惑って・・・なんでそないなことを・・」
「ほれ、あんた。もうちょっとなんとかゆうたらどないや・・。」
「(泣きしだれている)・・・・・・申し訳ありません・・・」
「はぁー。もう、さっきからずっとこんな調子ですわ。まぁでも、わてらも色々調べて分かったんやけどね、やっぱり王さまの酒癖が悪いらしいわ。後、これもね(小指立てて)ほんで、それで結構泣かされてたみたい。王さまにギャフンと言わせたかったんと違いますか」
「あ、あんた!そんなことのためにワタイらを利用したんですか!わ、わたいらはね!この国を救いたい一身でね、この依頼を受けたんでっせ!その気持ちを!馬鹿にして!」
「川田さん、ウソはいけまへんで(笑)」
「と、とにかく!あんたに預けたお金、返して下さい!!」
「・・・・」
「はよう!」
「川田さん、今すぐには無理みたいでっせ」
「なんでです?!」
「この人、今日の昼間に、わてらから集めたお金で、クシャミ爆弾買うてたみたい」
「クシャミ爆弾?」
「どうやらそれで、悪魔城の辺りを襲撃しようとしてたみたい。・・・しかもワテら勇者のせいにして」
「カー!かなわん人やなぁ、ほんまに。箱入りにもほどがあるんと違いますか!!」
「とりあえず、お金やその辺のことは王さまが帰ってきてからでよろしいでしょう・・・まぁまぁ、この人も、王さまの傍若無人振りに、ノイローゼ気味になってたみたいやね。あんまりきつくゆうのはやめたげましょう」
「カーっ!あんたらは人が良すぎますな!ほんまに!」
「川田さん、あんた女神さんとごそごそできへんかったからそんなに怒ってなはんのか?」
「当たり前ですがな!!」
***
「いやはや、まぁ、一件落着して良かったですね」
「まったくです」
「さっき番頭さんにも電話入れときましたわ。番頭さん、えらい謝ってましたで。すぐに王さまに連絡するってゆうてました。まぁ、これで王さまがちょっとでも反省してくれたらええんですけどな」
「悪魔さんの方にはワシがゆうときましたわ。有難う御座います、ゆうて。まぁ向こうさんは、サッパリしたモンですけどな」
「そりゃぁ、アッチは今再建で忙しいんでしょうな。それどころやないんちゃいますか」
「はー。まぁ、終わってもうたら、アッちゅうまでしたけど。なんか面白かったですな。」
「さいですなー。ワタシもちょっと、昔の若い頃の血が滾りましたわ!」
「ほえー。長谷川さん、昔なんかやってはったんですか?」
「へぇ。ちょっと空手かじってたんですわ」
「そりゃえらいモンですな」
「わたいなんか、今朝、望月さんに言われて着いて行っただけで、全然何もしてまへんがな」
「アハハ。川田さんは確かにそうですなー。でも一人でも仲間がおって心強かったですわ」
「そうですかー?(笑)」
「はぁ。明日からまたいつもどおりの仕事ですなー。」
「ほんまですなー。ほやけどいつかまた、世界が危機に陥ったときは、ワタイら呼んでくれたらええのになぁ」
「ほんまですわ!もう大体勝手は分かってるよって、わたいらに頼んでくれた方が、絶対ええ思いますけどな」
「そうやそうや!」
「勇者の実習ビデオも見たしなぁ(笑)」
「・・・・どうです、まぁ明日から仕事ですけど、今日はこのまま帰るのも悲しいですがな。とりあえずお祝いと我々の出会いをかねて、これから一杯飲みになど・・」
「お!ええですな!行きましょ行きましょ!」
「よっしゃ!今日は飲むでぇ」
「しかしお妃さん、ええ女やったなー」
「川田さん、もうそろそろ諦めなはれ(笑)」
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