「なぁ、おとうちゃんー」
「・・・・・・・」
「なぁ、おとうちゃんてー」
「なんじゃい」
「あのなー、えっとなー」
「ほぉ」
「あのなー、えっとなー、ヤマダ君がなー」
「ほぉ」
「えっとなー。・・・えっとー」
「なんやユウコ。お前言いたいことさっさとゆわんかい。おれのムスメやろが」
「えーっとなー。あのなぁ、ヤマダ君がなぁ」
「ほぉ。」
「昨日な、ヤマダ君と遊んでたらなー」
「おい、ちょい待て。ヤマダ君て誰や」
「ヤマダ君てなー。えっとなー」
「おーい」
「・・・・・・・・・・・」
「おーい。ヤマダ君って、どこのどいつや」
「ヤマダ君ってゆうたら、あれ、あのコやないの。保育園の隣のタバコ屋さんのコ」
「おーおー。なんやそれ、アイツか。グルグルメガネのことかいな」
「グルグルメガネて・・」
「おいユウコ。ヤマダ君ゆうたら、あの、ガリベンのグルグルメガネのことか」
「えーっとなぁ、ヤマダ君とな、いっつもなー」
「ようユウコらと遊んでるんやないの。」
「なんじゃいな、グルグルメガネ。うちのユウコのことが好きなんか。っちぇッ。身の程を知れっちゅうねん」
「ユウコえらい可愛がられてるみたいよ。ヤマダ君一つか二つ上やったんと違うかしら」
「だーれが、あんなガリベンみたいなヤツにユウコ触らすかぁ。のぅ、ユウコ。オマエ、グルグルメガネがごちゃごちゃゆうてきても、相手したらあかんぞ」
「お、おとうちゃんー」
「おう。ほんで。えぇ。グルグルメガネがどないしてん」
「ヤマダ君がなー、・・・」
「ちょ、ちょっと待て。オマエ、ちょっと。グルグルメガネ、ゆうてみい」
「えーとなー」
「ほやから、ちょっと。グルグルメガネ、ゆうてみぃて」
「・・・・ぐるぐる、めがね」
「よっしゃ。ほなら、ヤマダ君、ゆわんとソイツのこと、グルグルメガネゆうて話せぇ」
「ヤマダ君がなー」
「ちゃうちゃうちゃう。グルグルメガネがなー、て」
「ぐるぐるめがねがなー、昨日なぁ」
「・・・・・・。・・・・・・・・・・ユウコ。誰と遊んでてん」
「・・・・・・・ぐるぐめがね・・・がなー」
「・・・・・・・・・・・・誰と遊んでてん」
「・・・ぐるぐるめがねとなー、昨日なー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あのなー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと、子供にアホなことゆわして、一人で爆笑するのやめてよアンタ」
「・・・・・・・・・・・・・・あー、おもろ。ふぅ。・・・・三才のガキが一生懸命、グルグルメガネ、ゆうて(笑)」
「おとうちゃん」
「あーあ。おもろかったナー。よし、ほな、ちょっとアッシは横にならしてもらおかなと」
「おとうちゃんー」
「もぉー。なんじゃいな、ハイハイ。おとうちゃん寝るからな、今から。・・・・・ちょ、ちょー、そんなに揺するなぁ」
「あのなー、ぐるぐるめがねがなー」
「ほおほお。ほんでグルグルメガネがどないしてん」
「昨日、公園で遊んどったらなー」
「ほお。そやから、それがどないしてん」
「なんかなー、東京怖いねんて」
「東京怖い?なんじゃそれ」
「東京、怖いてゆうねんて」
「東京怖い?グルグルメガネがそないゆうんか」
「怖いねんて」
「なんじゃそれ。おーい、グルグルメガネが、東京怖い、ゆうんやとー」
「・・・・・・・・・・」
「ちぇ、無視しよる。。。へー。そうかそうか。ほー。マァ、そりゃ、そういう見解もあるかも知れんけどのー」
「大阪より怖いのん?」
「ハッ。んなことあるかいッ。東京モンなんかいっこも怖ないわい。なんでやねん、そんなモン。えぇ。東京なんかな、アレ。人間ぎょうさんおるけどな、アレ、アレな。全部地方の田舎モンが集まってきてんねんぞ。えぇ。あれ全部田舎モンやがな。東京とかユートルけどな、あれ全部、あれや。アメリカみたいなモンや。トキオーゆうて、格好だけシャンとしとるようなモンじゃ。えぇ。ほやからイッコモ怖いことなんかないねんぞ。」
「ヤマダ君が東京は怖いゆうてぇ」
「怖ないちゅうねん。えぇ。そんなモンな、えぇ。ユウコ。オマエにいっつもゆうてるがな、西成のオッサンの方がよっぽど強いねんからな。東京モンなんか怖ないわい。のぅ。ユウコ、お前、この前、西成のオッサンにジュース持ってくるの手伝ってもろたやろが」
「・・・・・ジュース持ってくるて、何かあったの?アタシその話しらん」
「いやな、この前、ワシとユウコで西成に串かつ食いに行ってたんや。ほんで、ワシ、ちょっとオレンジジュース飲みたなったから、ユウコに自販機に買いに行かしてん。」
「ちょっとぉ。店にもあるんやから、そこで買うたらええやないの」
「うるさい。店のは高いんじゃ。ほんでな、一人で買いにいかしたんよ。ほならな、アレや。そのジュース、カップに入ったやつやからな。二つ買うたけど、ユウコ、うまいこと持てへんかったわけよ。」
「はぁ」
「ほんで、それでもちょっとずつ、ちょっとずつ歩いてたんやろなぁ。ほなら、近くにおったオッサンがな、一つ持って助けてくれてな、ワシのところ来たんや」
「あらそう、そりゃ良かったねぇ」
「オッサン優しかったなぁ、ユウコ」
「うん」
「ほんでちゃんと有難うゆうたな」
「うん」
「えらいね」
「うふ」
「大阪のオッサンはな、ユウコ。強いし優しいんやぞ。駅の構内でジャリ銭ぶちまけても、いっこも助けてくれへん東京人とはえらい違いじゃ」
「ジャリ銭ぶちまけたんかいな。アホやなホンマ」
「ウルサイッ!あのときのワシの惨めでかつ悲しくも切ないキモチといったら・・・」
「アホちゃうか」
「天王寺でぶちまけた時はなぁ、えぇッ。オジンもオバンも、ネェちゃん兄ちゃん、そこらにおるヤツ全員、皆こぞって拾ってくれたぞッ!」
「それ絶対ちょっとネコババされてるやろ」
「されてへんわッ!ちゃんと数えたわい」
「かなんなぁ、アンタ。。ホンマ、アンタにはもう、あんまりお金もたせたらアカンなぁ」
「まぁ、そやけど、ユウコ、お前は女のコやからな。お母ちゃんの子供や、絶対美人になるがな。ほやからな、これから大きいなったら、どこ行っても、悪い虫が来よるわ。な。」
「・・・・・・おとうちゃんー」
「ほだからな、お前が大きなって東京行くことになってもな、コイツ変やな、思たりな、ウマイ事ばっかりゆうようなヤツが近寄ってきたらな、えぇ。な。そんときはな、そういうヤツの話はな、あれや、もう、話半分に聞いとくんやぞ。な。まともに相手したらイカンぞ。」
「・・・・・」
「お前は女のコで力弱いねんからな、そうやって自分を守っていくんじゃ」
「・・・・・?」
「アンタ、ユウコ全然分かってへんやないの。分けの分からん話を小さいコに教えんといてください」
「な、話半分やぞ、な。アレや。半金半手みたいなモンや。えぇ。な、そやないと、先方怒りよるからな」
「なんの話よ」
「グルグルメガネもな、そないして、つかず離れずウマイことしたらな、物買うてくれるかもしれんからな」
「コラッ!子供に変な知恵教えるな!」
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