2010年6月9日水曜日

コンビニ







「えーっと、どれどれ……。……お、あったあった。………これやがなこれやがな。えぇ。今週号が出るんを一体どれほど待ったか。えぇ。ウン、…マァ、どれほど待ったて、二週間待っただけなんやけどな。お、ちゃーんと週刊ウワサと書いたあるな。合ってる合ってる。……おぉ、ホレ。これ見てみい、ここの見出し。えぇ。ウーン。かなんなぁ……、へへへ…。…ちょっとワクワクが止まらへんやないか。うふ。この記事どれほど心待ちにしてたか分からへんで。えぇ。今週の一面スクープ!と書いたある。……ちょっと声出して読んでみたろ。……オッホン…….。………スクープ!誰もが知ってる超有名人K.K極上生絞り盗撮!隅々まで撫で回した60分!超激写!……カーッ、我慢できへんなぁホンマ。えぇ。…なんか、声出して読んでみたらよけいイヤラシイ気がするな。えぇ。字ぃで読むよりも、えらいコーフンするがな。かなんなぁ。…… …ちょっともっかい声出して読んだろ…。エー、……誰もが知ってる超有名人K.K極上生絞り盗撮!隅々まで撫で回した60分!超激写!……おふぅ… ……タマランなホンマ。えぇ。……はよ家帰って袋とじのDVD見たいナー。ウフフ…。おっと、まぁまぁ、そないに慌てんかてええがな。今日はちょうど、漫画週刊誌が沢山出てる日や。まずここでゆっくりと立ち読みでもさしてもうてやで、ほいで、酒でも買うて、えぇ。それからユックリ余裕カマして家帰ったらええがな。なんかて今日は花金じゃ。夜更かしもイッパイできるしなァ。うふふ。… ……せやけど、今回もDVDの中、偽物やったらイヤやなぁ。。前回のやってえらいヒドかったがなあれ。えぇ。エーッと、あれ題名なんちゅうたかいな。…… …あぁ、そやそや。エー。……庶民派T.Hの危機!ねぶって震えるぷるんぷるん白魚玉子肌!残さず食べ尽くし60分!やったか。… ……正直、庶民派T.Hと書いたあるけど、誰の事か分からんかったわい。せやけどこんな煽り文句かかれてね、誰が無視できますか。えぇ。これに反応せぇへんで何が男やっちゅうね。わたし見つけた途端ソッコー買って、高鳴る胸押さえながら家帰ってね、ほいでDVD見ましたがな。ほたらそこに何が映ってた思う。えぇ。テレビの画面いっぱいに、美味しそうな豆腐さんがデカデカと映ってて、ほんでそれを誰か知らんオッサンが、ねぶったり齧ったりしながらウマそうに食べてたがな。ほんでオッサン、60分かけて美味しそうにちゃんと完食して、最後にごちそうさまでしたッ!!ゆうて、えぇ。大ォーきなエェ声やったであれ。こっちもおもわず、おそまつさまでしたッ!!ちゃんと返事してもたがな。えぇ。えらい美味しそうに食べるから、こっちもお腹すいてきたがな、ほんま。…マァたしかに名前T.Hやし、白肌ぷるんぷるんやったけどやで。広告に偽りないからこっちもよぅ言わんけどやな。………せやけど、せやけどね。いくら騙されてるゆうてもね。男はワナて分かってても、そういうところにあえて入っていかなアカン、なんちゅうか、物事の勝負時、ちゅうモンがあるんや。ウン。あれやがな、虎穴に入らずんば虎児を得ずちう、えらい人の言葉がありますがな。えぇ。今週号のこの記事はな、これ、ゼッタイ逃したらあきまへんのや。今回の記事のこのK.Kってね、これ、ゼッタイあの有名女優のキタノケイコのことやがな。今飛ぶ鳥落とす勢いのキタノケイコが、あんなことやこんなことなるて、そんなもん、えぇ。おれのね、この、おれの息子サンがそんなもん、黙ってゃァしまへんで。えぇ。男やったらそんなもん、キタノケイコの一部始終を、責任もって見届けてやるしかないがな」
「………いらっしゃいませー」
「…………………。…… ………うぉ。なんやなんや。なんかエラい漫画みたいなヤンキーが来たがな。…… ……なんやあれ。今時キンキンの金髪に真っ赤なトレーナーて。またえらい服のセンスやがな」
「…… ………… …オイコラ、ネーチャン」
「………は、はい?………」
「今日おれな、昼間ここで、ジャイアントフランク買ぅたんや」
「……あ、ありがとうございます……」
「挨拶なんかええわい。おれなジャイアントフランクな、大好きなんじゃ」
「…………は、はぁ。」
「いっつもな、仕事の三時休憩のときに、ここでジャイアントフランク買ぅてんのや。まぁ、ゆうたらワシのオヤツじゃ。ほんでな、今日もいつも通りここで買ぅて食べてみたらやで。なんかえらい変な匂いがしての、まともに食えたモンやなかったんじゃ。オイコラッ。ワレんとこは店で客に腐ったモン買わすんか。」
「も、申し訳ありませんッ!」
「バイトのネーチャンの詫びなんかいらんのじゃ。店長出さんかい」
「ハ、ハイッ。今ちょっと奥にいますんで、呼んでまいります…… ……、あ、店長ッ!」
「ど、どないしてんユミコちゃんッ」
「店長、こちらの方が……… ……」
「ど、どないしましたんで?ウチの者が何か不手際でもしたんでしょうか?」
「どないもこないもないんじゃ、おぉッ。ワレのとこは腐ったモンを客に売ってんのか、ちゅうてんねん」
「エェッ!腐ったモン?」
「このお客様がお昼に購入されたジャイアントフランクが、腐ってたんですって」
「えぇ?ジャイアントフランクが?」
「そうやがな」
「え、そんな阿呆な…。レジにある棚モンは、消費期間もかなり余裕持たして処分してるンで、まさか商品が腐るなんてことはないと思うんですけど……」
「そんなワレの都合なんか知らんのじゃボケッ!こっちは楽しみにしてたオヤツの時間台無しにされて腹立ッとんのじゃ」
「………オヤツの時間?」
「なんか三時休憩の時に、ウチのジャイアントフランクをオヤツで食べるんが楽しみなんですって」
「うちんとこの?ジャイアントフランクを?オヤツにしてんの?」
「そうらしいです」
「お前、こっちはこんなモン買わされてエライ迷惑してんのじゃ。エェ、コラ。」
「ふっ、それはどうも申し訳ございません」
「何笑てんのじゃコラ」
「店長ッ(笑)」
「いや………だって、………… ……ええ年してオヤツとか(笑)」
「お前らなめったらアカンぞラアッ!」
「ヒイッ!!(二人同時)」
「……… ………………ほやから、こっちとしては誠意を見せろちゅうてんのじゃ。おぉ?」
「……………誠意と言われましても………。だいたい、腐ってる、ゆうんが分かった時点で、なんでそれをすぐ持ってきてくれへんかったんです?」
「三時休憩は十五分しかないから時間がなかったんじゃ」
「せやけど、現物持ってきてもらわんことには、こっちとしては何とも………」
「…オイコラワレ。お前、もしかして、オレがウソついてるゆうてんのか?」
「いや、そうゆう分けやおまへん」
「腐ったモン買わされたんは、客のオレやねんぞッ!?こっちは夜にわざわざ、用事もないのにもっかい来てんのじゃ。それやのにお前のその態度はなんやねんッ」
「かなんなぁ。。……… ……ほんなら、新しい方の商品を渡しますんで、それで勘弁してください」
「アカン」
「……は?」
「そんなモンではアカンわ。お前らの態度も気に食わんしのう。そんなんではもう、ワシの気分は収まらんようになってきた。」
「……………」
「フリーパスじゃ」
「……………は??」
「ジャイアントフランクの1年間フリーパス発行せいや」
「……。……ジャイアントフランクのフリーパスて、一体何です?」
「いや、そやから、ジャイアントフランクを1年間、どんなに食べても無料、ゆう券や」
「それがジャイアントフランクの1年間フリーパス言いまんの?」
「そうじゃ」
「……………。……… ………………………………」
「店長ッ(笑)」
「お前何笑てんのじゃゥラアッ!」
「ピンポーン」
「………あ、いらっしゃいませー」
「こんばんわぁ、店長」
「あ、ミヤさんッ」
「………。… ………………。……………なんか、モメてまんの?」
「いやいや、気にせんといて。こっちのことやから」
「そう?……… …………? ……………って、お前ワレ、カキモトちゃうんかッ」
「………え、……あ、え……」
「ワレお前、今何してたんじゃ。この前ワシが補導したとこちゃうんか?オォ?」
「……… ………あ、…… …いや、」
「…あぁあぁ、ええよええよ。ミヤさん。これはウチとこの人の問題やねんから。わざわざ警察の人に割り込んでもらわへんでも。あれでっしゃろ、ミンジなんちゃらゆう……」
「……… …はぁ、まぁー、…… ……そうでっか?………いやいや、せやけどね、こいつら甘やかしたらあきまへんで、店長。こいつら暴走族でっさかいね。夜中にホンマ好き放題やっとるし、こいつらの上のモンじゃ暴力団と繋がってるみたいやからね。まぁしかし、仕事やけども、こんなしょうもないヤツに付き合わされてね、ワシらもホンマ迷惑しとるんですわ。ほやからね、ホンマ、こいつらにはワシ、並々ならぬ私怨があるんで。…… ……オイコラ。お前この店のシノギに手ェ出してみい、ワシが地獄の果てまでお前ら捕まえにいったるからなァ…」
「…… ……… ………」
「マァマァ、そないにゆわんでもエエですがな。ねぇ。お兄さんもえらい縮こまってしもて。…… ……マァ、ミヤさんは買い物楽しんでくださいな。わたしはもうちょっと、この人と話してますから」
「…… ……。…… ……ほなら、なんかあったら、ワシにゆうて下さいね。すぐコイツに縄かけたりますからッ。……… …… ……シッ!」
「………………」
「……… なぁキミ、ミヤさんに補導されたん?……あの人怖いやろ。…… …あの人、ホンマは警察官やる前はゴクドーやったんちゃうか、ゆわれてんねんで。せやないと、あの迫力は中々でぇへんがな。えぇ。…… …えーと、ほんで、…何話ししてたんやったかいな…… ……」
「せ、せやから…… …」
「あ、そうやそうや、ふっ、フリーパスがなんやら……」
「ジャ、ジャイアントフランクの代金返してくれたら、それでええわ」
「へ?」
「……… …いや、そやから、今日おれが買ぅた、ジャイアントフランクの代金返してくれ、ゆうてんねん」
「へ?……… …いやいや、あんた、ふっ、フリーパス欲しいやとかなんかゆうてましたのは…」
「それはもうええんじゃッ。さっさとおれが今日買ぅた、ジャイアントフランクの代金返せェ、ちゅうてんのじゃッ」
「……なんかありましたのんか店長?… ……カキモトお前ワレ、店長に向かってなんちゅうクチの聞き方してんのじゃッ。おおッ?」
「……あ、いや…… …」
「なんでもおまへん。ミヤさんはお買い物楽しんどってくださいな」
「……… ……さよか?………… ………」
「店長、あの人えらいションボリしてますね。」
「マァ、なんちゅうても、仕事にイノチかけてる人やからなァ…」
「…… ……あの……」
「あぁあぁ」
「ジャイアントフランクの代金……」
「あ、ハイハイ。………… …ほな、これ。…これで、許してもらえますのんかいな?」
「……… ああ、ええで」
「どうも有難うございますッ!ホラ、ユミコちゃんも、ちゃんとお礼ゆうて」
「どうも有難うございますゥ!」
「今後ともごひいきに頼みますッ」
「…… ………………… ………… ……なんやなんや、えらい大声出してェ、叫んで喚いて。あれが若さちうヤツかいな。えぇ。…なんかジャイアントフランク!ジャイアントフランク!て聞こえてきてたけど………。ジャイアントフランクのフリーパスて、何をゆうてんのや。そないにジャイアントフランクが好きなんかいな。エェ。見た目ゴリラみたいで、かつアホなヤンキーやがな。…… …そやけど、あの警察官もエラい恐ろしいやっちゃで、えぇ。えらい怖いがな。あれ絶対そっち系の人やろ。いやいや、そりゃァ、ああいう仕事は犯罪者相手にするモンやから、なめられたらアカンのは分かるけど、そやけどあのナリと怒鳴りはどう見てもほんまモンやがな……。えぇ。公務員ちゅうんは恐ろしいもんやで。………。……… ……アレ、あのヤンキー、用事済ましたみたいやのに、こっち来ようで。……なんやねん、…ここ来て立ち読みする気かいな。えぇ。……かなんなぁ。夜12時すぎたら割りと人も少ないから、ここはいっつもワシの天国やのに……。あんなイカツイのんが来たら、ゆっくり立ち読みできへんがな……………」
「…… ……………ちぇッ。クソッ。あのポリ公が…。もうちょいでフリーパス吹っかけれたのに。ボケがほんま…」
「………………」
「あんなモン、腐っとろうがなかろうが、インネン吹っかけたら一発やのに…。ホンマついてないで。よりによってあのポリ公がおるとか」
「……………………(やっぱり腐ってんのウソなんかいッ)」
「………。………あぁ?…ワレ今なんかゆうたか」
「……………………」
「コラ。何ワレシカトしとんじゃ」
「………へっ?…………。……… …へ?………ワタシですか?…え。な、なんかわたしに用でっか?…… ………いや、わたし、ちょっとこの雑誌に夢中やって……、周りの事全然聞いてなかったんですわ。え、エー。何があったんやろナー……全然分からんナー」
「………。…………ちぇッ。なんやワレ。……変なヤツ」
「…………(ムカッ。腹立つやっちゃナーッ。……なんじゃいなコイツ。……知らん知らん。ほっとこほっとこ。これ以上関わったら面倒やしな……)」
「………………………」
「………(なんか単車の雑誌読み始めたぞ。……やっぱりそうゆう雑誌が好きやねんなぁ、こうゆうレンチューわ。……いやいや、ムシやムシや、こんなアホ。……それよりも。えぇ。この週刊ウワサ。………………オー、DVD以外にも、ソソられる記事がいっぱいやんか。今回の記事も。えぇ。かなんなぁこの雑誌わ。。男のツボちゅうのをホンマに分かってるで。えぇ…)」
「………………。……………」
「………………(うわッ!こ、この体勢はアカンやろ………。この体勢で、エェッ!)」
「………………………」
「………(ひえぇッ!お、おなごにこんな格好させたらアカンがな、エェ……。やめてあげてぇな。。わたしそんなに挑発されたら、えらい事になってしまうで…。や、やめぇや……)」
「……………………。……………。……………」
「………(ちょ、ちょっと、今週号はちょっと、度が過ぎるんとちゃうか………。これはアカンやろ、これは。エェッ!こんなもん見せられて、ワシらどうしたらええねんッ!!)」
「…………………。………………………」
「………。………ぎゃーッ!!も、もう見てられへんがなッ!!…幾ら年頃のオトコにもシゲキが強すぎるがなッ!!」
「……………。………………」
「……………!!………………あッ………………」
「………………………」
「………………………い、いやぁ…………」
「………………。…………」
「………………。………(なんか、めっさ見られてるで……)」
「……………………………」
「…………い、いや、………アノー、別に何もおまへんねん………」
「………………………」
「………………、いや、あのー、…………き、気にせんといておくなはれや……。……てドウゾ、そちらの続きを読んだってください………」
「………………」
「………………、いや、そやから、…………あの…………」
「…………。……………おい」
「……………はいッ?」
「……………それ、何読んでんねん」
「…………はッ?…………いや、………………只の雑誌ですケド…」
「なんちゅう雑誌読んでんねん、ゆうてんねん」
「ヒッ!……… ……な、なんちゅう雑誌て………。アノ、週刊ウワサ、ゆう雑誌ですわ………」
「……………………。…………」
「………な、………なんだんねん、一体………」
「……エロいんか、それ」
「…………は?」
「……エロいんか、ちゅうてんのじゃ。その雑誌」
「…………………はぁ。それはもう………」
「それはもう、なんやねん」
「…………それはもう、………その、えらいこっちゃですわ……」
「………………そ、……………そんなになんか」
「……………えぇ………。それはもう……。… ……果てしなく、えらいこっちゃですわ」
「………………。………そ、そんなにエロいんか…………(ゴクリ)」
「わたい今、ちょっと奇声上げてたでっしゃろ」
「………ほぉ」
「…………………、この中身が、あんまりにもエゲツないモンやさかい、さすがのわたしも見てられしまへんで、大声出してしもうたんですわ………」
「…………マ、マジか……………」
「正直、とてもこの世の物とは思えまへん」
「……………………。……チョ、チョット………、おれにも見してくれへんか?」
「……………………。……………」
「………ちょー、…おれにも見してくれや」
「………………わたいのやのぅて、他の新品探したらえぇやないですか」
「…………今探してみたけど、他の新品は、もう売り切れてないみたいや」
「………そりゃそうでしょうな。大人気の雑誌ですからな、この雑誌(ウソやウソやッ!…ほんまはこの週刊ウワサ、超マイナー雑誌やから、ワシが店長に頼んでほんの数冊だけ入荷してもろとるんじゃ……。………しかしなんかオモロイ事になってきたナ…。………ちょっとコイツからこうたろ)
「マ、マジかいな。……ほなら、ちょっとお前が持ってるヤツ、見せてくれや」
「………。…イヤです」
「な、なんでやねん」
「だって今わたし、読んでるとこですから」
「え、えぇがな、チョットくらい…。…お前どうせそれ、買ぅて自分家で読むんやろうがッ」
「………。…なんやウルサイですな、アンタ。わたしがこの雑誌どうしようが、アンタには関係ないがな。この商品は今わたしが持ってるんでっせ?…そりゃアンタの言うとおり、わたしこの雑誌買いますけどな。…ほなけど、今ちょっと中身の確認してますのんや。そやから端からゴチャゴチャゆわんとってくれますか」
「………そ、そんなことゆわんと、ちょっとくらい見してくれや…。……ちょっとくらい見せてくれても減らへんやろがいな…」
「………かなんなぁ。今一番エロいとこ見てる最中やのに…」
「い、一番エロいとこ見てるんかいな…」
「ハァ。それはもう、この世の物とは思われへんほどのエロさでっせ」
「…………(ゴクリ)」
「ちょっとページ開いてこうやって見てみるとぉー、…………おふぅッ………………」
「…………。………ど、どないやねん………」
「……スゴすぎて今ちょっと三途の川見えた」
「マジでかッ」
「………お子様にはちょいとシゲキが強すぎるかもしれへんナぁ………」
「……………だ、誰がお子様やねんッ」
「もうこの分野で達人の域のわたしでさえ、今ちょっと冥土が見えましたからなァ…。アンタみたいなボンボンやったら、ちょっとそりゃもう、一目みたら死んでまうかも分からへんで……」
「………………た、頼むワ、ホンマッ!ちょ、ちょっと、マジで頼むから、一瞬だけその本貸してェな……。頼むわおっちゃん」
「誰がおっちゃんやねんッ!!!まだ26でピチピチのドーテイ貴族じゃワシわッ!…お前ちょと舐めたことゆうてっと貸してやらんぞラァッ」
「ス、スンマヘンッ!………………どうか、頼んます、知らんお兄サン…」
「ちうか、今借りてどないすんねん」
「ソッコーで終わらすからッ」
「便所かけこむんかいッ!」
「ウン」
「かなんなぁ、このガキわ。… ……ちゅぅか、何でそんなにエロ雑誌に必死やねん」
「………………いや、おれんちアパートで、一部屋に家族三人で住んでるから、家ん中でエロ本なんか見れへんねん………」
「ショボッ」
「………かとゆうて、買うのも恥ずいし……」
「弱ッ!………。……… ……てか、お前ようそんなんで人様にエラそうに喋ってたなァ、エェッ!さっきもレジんとこで店員さんに文句ゆうてたし」
「………………はぁ………」
「今のお前はなぁ、アレじゃ。ゆうたら、人生レベル1じゃ。えぇ。分かってんのかコラ」
「……………………」
「ナぁ。ゆうたら、さっきは人生レベル35の店長に文句ゆうてたんやぞ。えぇ。レベル1のくせに。えぇ。ちったぁ恥を知れ恥を」
「……………すんまへん………」
「あの店員のお姉ちゃんなんかな、えぇ。…… ……そうやな。あのお姉ちゃんなんか、…………可愛い顔してるからな……。えぇ。…… …おそらくあれは多分、人生レベル56くらいやな…」
「56すかッ!」
「あぁ。ああ見えてな………実はもう、それはもう、えらいことになってんねんで…………もしかしたら56じゃきかんかもナ……………」
「…………(ゴクリ)」
「ちなみにわたいは、それはもう、とてつもないレベルやけどね」
「………………。…………………」
「………………。…………チェッ。しゃぁないやっちゃナぁ。…………。ホラッ。………ほたら、店の人に見つからんように便所もっていけや」
「あッ!ありがとうございますッ!!」
「若さに任せてカキすぎんなよッ。…………正味なハナシ血ィ出るからナ………」
「…………………。………………………………」
「って、もう居てないがな。エェ。早すぎるがな。………………しかし、なんじゃアイツ。オモロイやっちゃなァ……。えぇ。エロ本一つであないに必死になるか?笑かすでホンマ。…… ……見た目イカツイくせに、エェ。ホンマ元気なアホやで…………」
「ピンポーン」
「………………。………………アラ。今度はなんか、丸坊主のやんちゃそうなんが入ってきたで。なんじゃいな………。……………。………なんやレジに直行していったぞ」
「すんませんすんませーん」
「…………………。…………なんじゃいな。また店長と女の子、奥に引っ込んでるがな。…………かなんなぁ、ホンマ。別にワタシ、他人の不倫をゴチャゴチャ言わんけどな。しゃーけど、仕事中に奥でゴソゴソすんのやめてくれへんかなぁ………。本人らはバレてへんつもりか知らんけど、いっつもスガスガしい顔して出てくるから、こっちがなんや恥ずかしい気ィしてくるねんし…………」
「……………………。…………………」
「のう、ホンッマ。独身貴族のワタシの身にもなってくれっちゅうねん。エェッ。……こんなエロ雑誌で自分を慰めるしかできへん、か弱い男子に、もっと優しくしてくれっちゅうに。えぇ。世間様ってばよ」
「……………。………す、すんまへん……………」
「うわァッ!ビックリしたァッ!」
「…………す、すんまへん」
「…………な、なんですの一体」
「……あ、アノー、ここのコンビニに、金髪で赤のトレーナー着たイカツイヤツ来ませんでした?」
「…… ………居てるけど」
「ほんまですかッ!…………………、どこ、おるんですかね」
「今便所おるわ」
「…便所?」
「今一生懸命、自家発電中やから、そっとして上げた方がええで」
「……はッ!?………………ちぇッ。何をやってんねん、あの人………」
「なんか急いでんのかいな」
「……イヤ、あの、……マァ、こっちの事なんで、……チョット…」
「なんじゃいな。隠さんでもええがな」
「エー。……………いやァ…」
「ジブンら暴走族なんやろ」
「…マァ、そうです」
「抗争かなんかか」
「………………ハァ……」
「ほほぅ……。なるほどなるほど、話が見えてきたゾ。ほんで、あのゴリラみたいなヤツの力がいるっちう事やな。そうか。そりゃそうやな。いかにも強そうやもんナー、アイツ……」
「…イヤー。そのー。実はそうでもないんでス……」
「………へ?」
「……イヤ、その、そうでもないんですよ、あの人」
「………どうゆうこと?」
「いやその、あの人、そないに強ないんですよ、ああ見えて」
「そうなん?」
「かなりビビリやし」
「なんじゃそりゃ!威嚇だけなんかいな」
「そうなんです…」
「そういや、さっきも、店員にインネンつけてたけど、警察官の客に見つかって、えらい搾られてたで」
「エェーッ。……モゥ、すぐエエ格好すんねんから、ホンマ。チューボウかっちゅぅねん……」
「ジャンボフランクのフリーパスくれとか、分けの分からん事を店員にゆうて絡んでたみたい」
「ちょッ!マジで言いにきてたんスかッ!…アホや(笑)」
「案の定、店員さんにも相手にされてなかったみたいやけどナ……」
「天然すぎるッ……。ほんっまアホやナー、あのヒト……」
「なんか、変なヤツやな、アイツ」
「ネェ…。…………せやけど、あれでも一応、総長候補なんですワ……」
「………………」
「………………………」
「……………は!?……………総長候補?」
「ビックリするでしょ、ホンマ。……今は一応、候補ってカタチなんスけど、マァ、次の総長はあのヒトで大方キマリなんですわ」
「……… ……アレが次期総長なん?」
「ハァ」
「……………ケンカ弱いんやろ?」
「それはもう(笑)」
「…………………。…………………いや、それアカンやん!」
「はい(笑)」
「………イヤイヤイヤイヤ、そうじゃなくって………」
「……………ねぇ。……多分オレらの代でウチの族終わりちゃうか、ゆうて皆でゆうてるんですわ(笑)」
「そんな、終わりかもしれへんて。。………何でそんなノンキやねん、ジブンら」
「マァ、今オモロいスから」
「……………………。………………オォ、なんやジュン来てたんか」
「あ、アキさんッ!何してたんスかッ!もうすぐアイツら攻めてきますよッ!」
「やいやいやいやいゆうないな。…ウッサイなァお前は。ほやから、おれ用事あるゆうたやろがッ」
「何が用事ですかッ。ジャンボフランクのフリーパスとか、分けの分からんアホなことゆうて」
「な、何ィ!」
「総長会議に出るのがイヤで、分けの分からん理由作ってココに逃げて来たて、おれら皆知ってるんスよッ!アンタがどんなにイヤがっても、ウチは満場一致で次期総長アキさんでキマリなんスから!今から自覚持ってくれな困りますッ」
「なッ!………だ、誰も逃げてへんわッ」
「………………………」
「あ、そうやそうや!そんな事よりも、さっき偵察に行かしたユウとタクが、まだ帰ってきてへんのです…。それでアキさん至急呼んでこいゆうててゆわれて……」
「マジでかッ!ほんで、二人から、まだ連絡ないんか」
「はい…………」
「ヨッシャ。ほな、とりあえずアイツら探しに行くぞ。…………………大丈夫や。オレが行ったら、アイツらくらい、すぐ助けたるからな。もう心配せんでもエエぞ」
「ハイッ!」
「ヨッシャ。そうと決まったら、オレは先に行くでッ!!お前は後からついてこい!どうせおれのスピードにはついて来れへんねんからなッ。…………………あ、お兄ちゃん、この本ありがとうッ!」
「………おう。………レベルちょっとは上がったか」
「メチャクチャ上がったっちゅうねんッ!!………………レベル最強じゃッ!………ヨッシャ。ほな行くわッ!………シュッ!…………………。…………………。………………」
「………………なんかえらい走っていきよったで。店内で走ったらアブないがな。…………ほんでなんやあの走り方………。…てか、なんか気持ち悪い走り方やな……」
「………………。……………本人も気にしてるみたいですわ。走り方」
「あ、そうなんや。」
「………………………。………………………あ、熱ゥッ!!!!」
「…………………………なんか自動ドアのとこで一人で叫んでるけど」
「…………静電気…………。………溜まりやすい体質みたいで」
「…………………………………」
「……………………………」
 




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