2010年6月9日水曜日

串かつ









「あー。酔うた酔うた」
「大丈夫っすか?めちゃめちゃ顔赤いですよ?」
「えー、そう?って何ゆうてんねん。まだまだ行けるっちゅうねん」
「でもあんま飲みすぎたら・・」
「大丈夫やって」
「おれが面倒見なあかん」
「・・・カッ!てめーの心配かよ。っけ。しょーもない男やでほんま」
「えへへ。」
「お前みたいな奴の世話にならんでも!ちゃんと自分で帰れるわっ」
「嘘ですって。ちゃんと送っていくし。あー、でもおれミキさんの住所知らんわ」
「誰が教えるかぁ。お前なんかに」
「教えてくれんと送っていかれへん」
「だから、あんたのお世話にはなりません」
「いや、僕がちゃんと責任もって、お家までお送りいたします。」
「いいえ、結構です。あ、おばちゃんビールもっぱい」
「そういや知ってた?」
「へ?何が?」
「もう二時やで」
「え、まじで。全然知らんかった。終電ないやん」
「いや、知らなさすぎやろ。気づけよ」
「あーどうしよっかなー」
「あのね、僕ね、すんごいええとこ知ってるんすよ」
「何がいな」
「いや、あの、泊まるとこ」
「あぁ。そこのスパワールドね。知ってる知ってる。夜中いっつもサラリーマンが泊まりに行ってるよね」
「いや、そうじゃなくって」
「ほなどこやねん」
「ミナミ」
「は?あほかお前。なんでわざわざミナミまで出なあかんの」
「いやだって、その辺しかキレイなラブホ・・」
「あのね」
「はい」
「何であたしがあんたとラブホ行かなあかんねん」
「そりゃー」
「あーうるさいうるさい。もうええって。あーし今めんどいからイヤやねんそういうの。あんた、何回ゆうたらわかんねん」
「いや、ぼかぁ至ってマジメでござる」
「ハハハ、あーおもんな」
「いやほんと」
「あんたええ加減にしときや、ほんま。この前聞いたで。カナとかゆう女泣かしたゆうて」
「え!誰に聞いたんすか?!」
「うるせー。おれの情報網あまく見んなよ」
「タカシっしょどうせ」
「はやっ」
「だってアイツしかおらへんもん。ミキさんにそんなことゆう奴」
「はっ。まぁそういうことなんすよ。あんたの行動なんか筒抜けってわけれす」
「ほんっま、タカシって、ミキさんに媚売ってますよね。なんっか、腹立つわー」
「あほか。人徳ってゆえや。何?なんつーの、アッシーとかメッシーとか?そんなやつ?」
「やったりしてないっすよね?」
「あほか」
「アイツ、ちょっと今度しばいとこ」
「別にええけどアタシに迷惑かけんといてなー」
「そんなもんかけませんよ」
「ほな別にかまんけどね。やるんやったら、どっか南港とかそんなとこでやって」
「ATCの近くとかで」
「はいはい」
「・・・タカシから何聞いたんです?」
「いろいろ」
「いろいろって?」
「忘れた」
「忘れたて・・。忘れるわけないやん」
「いや、ほんまに細かいことは忘れたんやって。だって、どうでもええもん、お前のことなんか」
「地味に傷つくことゆうなー」
「傷つけてんねん。」
「そんなこと言わんとって下さいよ」
「だーかーらー。女泣かさんとその女んとこ行ってろよ」
「おれね、その女とは別に付き合ってないんすよ。」
「ふーん。」
「なんかね、勝手になんかそんなん思われてて、付きまとわれてるんすよ」
「やったんやろ?」
「へ?」
「やったんやろ、て」
「あー、まぁ、やりましたけど」
「ほなお前が悪いんやん」
「えー。二三回やっただけやのに、そんな・・」
「知らんがな。ってかほんま、そんなんばっかりやなお前」
「だって遊びですもん」
「遊びって、まぁ、そりゃ遊びやけどな」
「もしかして妬いてくれてるんすか!?」
「しね」
「おれね、女が付き合って、とか言うてきたら、ちゃんとゆうてますもん」
「何を?」
「おれ好きな女おるから付き合われへん、ゆうて」
「へー。」
「それでね、そんときは、だいたい女もフンてゆうんですわ。そやのに、やったらね、なんやしらんいつの間にかベタベタくっついてきよる」
「あらそう。どっちもどっちって感じやね」
「どうですか!」
「は?」
「ぼく。なんかこう、貞操守ってる感じでしょ」
「いや守ってへんやん」
「心は誰にも渡してません」
「あーなんかあんた、メッチャめんどくなってきたなー。そろそろ帰っていい?」
「あ、あ、ウソウソウソウソ!!ウソです!!もう言いません!」
「アハハハハハ!わらかすなー、なんやねんそのとり乱し方!あほかぁ」
「え、ヘヘヘ(笑)」








****








「…ヒロ」
「はい?」
「タバコある?」
「あ、ありますよ」
「マルボロやんな」
「はい。あ、もうこんだけしかないから、全部どうぞ」
「全部もろたらあんたの分ないやん」
「いや、もう買うてあるんで」
「あっそ。ほな貰うな。ありがとう」
「・・・・・・ ・・・・・・。」
「・・・・・。・・・・・・・ーふぅ。・・・・・・・・・」
「・・・・・。・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・。・・・・・・・・・。・・なにぃ」
「・・え、いや、格好ええなーおもて」
「何が」
「いや、ミキさんのタバコの吸い方、やっぱ格好ええっすわ」
「なんやそれ(笑)」
「いやほんま」
「そんなんゆわれても、あたしには分からん」
「女でね、タバコ吸うの格好ええ女とか、中々おらへんすよ」
「ハハハ。地やねんから、しゃーない」
「忙しいっすか?仕事」
「うん?・・・うー・・・うん、・・・・スー・・・・。・・・・フゥ。・・全然忙しないで」
「事務やっけ」
「そうそう。オーエルやで。一応」
「はは。でももう結構長いっすよね」
「3年くらいちゃう?」
「あ、まだそんなもんか」
「(笑)」
「居心地ええから?」
「そやなー。まぁ、悪くはないなぁ。経理しながらタバコ吸うててもええし」
「タバコ吸ってるん(笑)」
「うん。だって社長がええってゆうねんもん」
「めちゃくちゃ楽やん」
「そやで。暇なときとか雑誌読んでっからなぁ。もうちょっとしたら潰れるかもしらんわ。零細やし」
「よう辞めさせられへんなぁ」
「あーそれは大丈夫。あたしなんか気に入られてるし」
「そりゃー、まぁ」
「それやしな、社長が従業員とやってるとこ見てもうたし」
「え?なにそれ(笑)」
「前、ちょっと用事頼まれたから、出てた時あってんけどな。帰ったら、なんか社長室の方から声聞こえてきてん」
「うん(笑)」
「ほいでゆっくり近づいて、社長室のドアに耳つけて聞いたんよ、なんか不自然な声やったし」
「ほお」
「ほしたらな、社長がな、従業員とやっとってん(笑)あ!従業員って、あの人やで!あの、あれ、タカサキさん」
「えー。タカサキって誰?」
「なんでー。ちょっと前に、あんたに向かえに来てもらったときあったやん。あんたが、たまたま近くまで来たとかゆうて」
「あー、知り合いん家の帰りやわ」
「そんときにおったでしょうが。あたしの隣に。おばちゃん」
「あ!」
「思い出した(笑)?」
「メチャクチャおばんやん!」
「ちょっ(笑)しかも両方既婚者(笑)」
「えらいグロテスクやなー」
「タカサキさんの艶かしい声が聞こえてきてやで、あんた。そんときのあたしの心中を、もうちょっと、察してみいや」
「(笑)」
「おもろかったなー。ほんでな、しかもあたし、ドアに耳付けすぎてな(笑)、ふっ、ほんでな(笑)、ちょっと近づきすぎてな(笑)、ドアな、開いてん(笑)」
「(笑)」
「あのな、咄嗟のときの人間っておもろいでー。なんかな、人間の本質ってのが見える気がするで。あたしがな、ドアがゆっくり開いてな、足つっかかって、部屋に入ってもうたんよ。ほならな、社長とタカサキさん、バックで合体しててな」
「(笑)」
「ほんで、あたし目の前の机に手をついてもうてんけど、そしたら、見事にその場の空気が一瞬で凍ってんけど」
「ほう(笑)」
「ほんでな、おそるおそる、社長ら見たらな、すぐに二人とも分離して知らんふりしてんねん(笑)下半身まるだしで(笑)いや、ばれてますから!」
「(笑)」
「あれはないわ、ほんま」
「わらかっしよんなー(笑)」
「ほんま、あれなに」
「ほんで社長、だまっといてくれ!ゆうて」
「そりゃもう。嫁パートに出しといて、ようやるでほんまに」
「それ元々出来とったんちゃうん」
「かも分からんな。嫁パートやらせとかんと、会社手伝わせーよって」
「あー、わらかすわ、ほんま」
「まぁね、そういうわけでして、実質あの会社掌握してんの、あたしやから」
「(笑)」
「お金貰えば良かったかなー」
「こらこら」








ジャーン   ジャーン    ジャーン    ジャーン








「電話」
「うん、・・・・・・・・・もしもし」
「・・・・・・・」
「うん、うん。・・・へ。今?知り合いと飲んでる。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・ああ。・・・・・・・・・・・・・うん。・・・・・・なんでやねん。・・・・・・・・・あほか(笑)」
「・・・・・・・・・」
「は?・・・・・。いやいや、全然ちゃうわ。・・・・あー、めんど。・・・・・何、え?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・うん。・・・・・いや、終電なかったから。・・・・えー。・・・ああ、はいはい。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・うん。・・・・・別にええで。・・・・・なぁなぁ。・・・」
「・・・・・・・・・・」
「おい、ヒロ!」
「・・・・・?・・・・なに」
「ちょー代われって」
「は?・・・え?おれ?」
「ああ。ちょいめんどい奴やねん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。・・・・・え?・・・・・え、はぁ。はぁ。・・・・いや、」
「・・・・・・・・」
「そんなんとちゃいますけど。・・・・・・・はぁ。・・・はぁ。・・・飲んでるだけです。・・・え、新世界の。・・・はぁ。壱番って串かつ屋。・・はぁ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・はぁ。・・・・・・・はぁ」
「・・・・ちょー」
「・・・・・・はぁ。・・・・いや、おれあれですわ、昔からミキさんの仲間内で・・・」
「・・・ちょー、貸してみー、ヒロ」
「・・・・・・。・・・・・はい。・・・・・・・」
「・・・・・・・・これでええか?・・・・・・・うん。・・・・はいはいわかったわかった、ほなな。・・・ピッ」
「・・・・・・・・・・何そいつ」
「知らん。めんどいやろ」
「なんかめっちゃ色々聞かれてんけど。え、何、ミキさんソイツと付き合ってんの?」
「ううん。付き合ってへんで」
「でもなんかソイツめちゃくちゃ彼氏面しててんけど」
「ちょっとメンドイやつやねんなー。割かしええ男やねんけど」
「・・・・えー・・・何それ」
「何がよ」
「・・・・・いや、今そういうのいらんゆうてたから・・・」
「へ?だから付き合ってへんって」
「ほなその男なによ」
「たまに遊んでんねん」
「ちょー。なんでそんなイヤラシイことを・・」
「そりゃあたしだって性欲も溜まるからな」
「あんた分かりやすすぎ」
「今電話して分かったと思うけど、結構うっとおしいやろ。・・・・・もうそろそろ切ったろうかな思てんねん」
「切れ切れそんなもん」
「何を不貞腐れてんの」
「うるさい!しらんわ、あほ」
「アハハ。なんであんたが怒ってんのよ。あんたもおんなじことしてるやろ」
「そんなもんなー。・・・・僕がなんぼでも相手したるやんけ!」
「あーほ。誰がお前みたいなガキとするか」
「なんでやねん」
「弱っちいからなー。お子様やもんあんた」
「うるさい!さっきの男なんかおれがしばき倒したる!」
「極真やでアイツ」
「・・!・・・・うそ」
「ほんまやで」
「天満の?」
「どこかはよう知らんけど」
「・・・・・それはぁ、・・・・・そ、そ。そんなもん!、おれがしば・・」
「そろそろ出よか。もう始発動いてるやろ」
「え、ちょ、ちょう待ってーな、・・・・あ、あぁ。勘定せな」








****








「あー、よう食って飲んだなー。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・おい!」
ペチッ
「アイタッ・・」
「何をさっきからふくれてんねん」
「だって」
「何がだってや!あほか。でっかい図体してるくせにウジウジして」
「・・・・・・・・・・・」
「あのな、何回もゆうてるけどな、あんたみたいなガキには興味ないの。な?!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あんたまだ21やねんから、なんぼでも他におるやろ?あたしなんかにかまわんでええから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あーもう。あんた普段は普通やのに、たまーにこういう風になるなぁ。男なんやから、もっとしっかりせえ!!!」
「・・・・・・・はい」
「そう、そう。そんでええねん。シャキっとしとき。男やねんから」
「うーん・・・・」
「あー、ああ。なんか、最後の最後で気分萎えてもうたなー。ノブんとこ行こっかなー」
「え、ノブって誰なん」
「さっきの極真や」
「あかん!!!極真んとこは行かんといて!!」
「アハハ!うっさいうっさい!よし、今から極真とこ行こー!」
「あかんって!!!」
「ほなまたなー!・・・・・って、あ、・・あぶな」
「あ!・・・・・」
「・・・・・・・・・・。・・・おっ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・。・・・・・・・ちょっと」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・。おーい。・・・・・・・ちょっと。二の腕、」
「・・・・・・・・・・・・」
「おい。二の腕離せ」
「・・・・・・・・・・」
「こら!」
「あ、・・・・すんません」
「何をぼーっとしてんねん。変な奴やな。きもっ!」
「ちょっ、きもないわ!」
「ハハハハ。良かったなー。最後にあたしの二の腕さわれて」
「えー・・・」
「しゃーないなー。ええぞええぞ。存分に味わえ」
「?」
「ちゃんと家帰るまで覚えとくねんぞ。その感触を。」
「な、なんでやねん」
「なんでって、二の腕の柔らかさは胸のやらかさってゆうやろーが」
「ちょ!そ、そんなん・・・」
「ええぞええぞ。そんなもん。それでナンボでも、一人でこいたらええがな。ええよええよ。そんくらい許したる」
「あ、あほか!そんなんするか!」
「そんなもんで、またしばらく飲み代おごって貰えるんやったら、お安いモンやわ」
「せこ・・」
「我慢したら身体に毒やで!若いねんから!」
「さっきから若い若いって、おれと四つしか代わらへんやろ!」
「アハハハ!・・・・・・まーあんたが、強なったら考えてやらんでもないけどなー。今のままではないなー」
「えー・・・・」
「まぁ、あんたがごちゃごちゃやってるうちに、あたしはさっさと嫁に行ってるかもしらんけど!」
「え!ちょ!ちょっと、それはないわ!って、あれ。あー、ちょー待ってぇな!送っていくって!」
「ええわ!一人で帰れるっちゅーねん。アハハ!わかったわかった、あんたのキモさに免じて、今日はおとなしく家に帰ってやるから!」
「ちょ、ちょー待ってぇなー!!送っていくってー!!なぁー!!なぁーってー」


 



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