「あー。酔うた酔うた」
「大丈夫っすか?めちゃめちゃ顔赤いですよ?」
「えー、そう?って何ゆうてんねん。まだまだ行けるっちゅうねん」
「でもあんま飲みすぎたら・・」
「大丈夫やって」
「おれが面倒見なあかん」
「・・・カッ!てめーの心配かよ。っけ。しょーもない男やでほんま」
「えへへ。」
「お前みたいな奴の世話にならんでも!ちゃんと自分で帰れるわっ」
「嘘ですって。ちゃんと送っていくし。あー、でもおれミキさんの住所知らんわ」
「誰が教えるかぁ。お前なんかに」
「教えてくれんと送っていかれへん」
「だから、あんたのお世話にはなりません」
「いや、僕がちゃんと責任もって、お家までお送りいたします。」
「いいえ、結構です。あ、おばちゃんビールもっぱい」
「そういや知ってた?」
「へ?何が?」
「もう二時やで」
「え、まじで。全然知らんかった。終電ないやん」
「いや、知らなさすぎやろ。気づけよ」
「あーどうしよっかなー」
「あのね、僕ね、すんごいええとこ知ってるんすよ」
「何がいな」
「いや、あの、泊まるとこ」
「あぁ。そこのスパワールドね。知ってる知ってる。夜中いっつもサラリーマンが泊まりに行ってるよね」
「いや、そうじゃなくって」
「ほなどこやねん」
「ミナミ」
「は?あほかお前。なんでわざわざミナミまで出なあかんの」
「いやだって、その辺しかキレイなラブホ・・」
「あのね」
「はい」
「何であたしがあんたとラブホ行かなあかんねん」
「そりゃー」
「あーうるさいうるさい。もうええって。あーし今めんどいからイヤやねんそういうの。あんた、何回ゆうたらわかんねん」
「いや、ぼかぁ至ってマジメでござる」
「ハハハ、あーおもんな」
「いやほんと」
「あんたええ加減にしときや、ほんま。この前聞いたで。カナとかゆう女泣かしたゆうて」
「え!誰に聞いたんすか?!」
「うるせー。おれの情報網あまく見んなよ」
「タカシっしょどうせ」
「はやっ」
「だってアイツしかおらへんもん。ミキさんにそんなことゆう奴」
「はっ。まぁそういうことなんすよ。あんたの行動なんか筒抜けってわけれす」
「ほんっま、タカシって、ミキさんに媚売ってますよね。なんっか、腹立つわー」
「あほか。人徳ってゆえや。何?なんつーの、アッシーとかメッシーとか?そんなやつ?」
「やったりしてないっすよね?」
「あほか」
「アイツ、ちょっと今度しばいとこ」
「別にええけどアタシに迷惑かけんといてなー」
「そんなもんかけませんよ」
「ほな別にかまんけどね。やるんやったら、どっか南港とかそんなとこでやって」
「ATCの近くとかで」
「はいはい」
「・・・タカシから何聞いたんです?」
「いろいろ」
「いろいろって?」
「忘れた」
「忘れたて・・。忘れるわけないやん」
「いや、ほんまに細かいことは忘れたんやって。だって、どうでもええもん、お前のことなんか」
「地味に傷つくことゆうなー」
「傷つけてんねん。」
「そんなこと言わんとって下さいよ」
「だーかーらー。女泣かさんとその女んとこ行ってろよ」
「おれね、その女とは別に付き合ってないんすよ。」
「ふーん。」
「なんかね、勝手になんかそんなん思われてて、付きまとわれてるんすよ」
「やったんやろ?」
「へ?」
「やったんやろ、て」
「あー、まぁ、やりましたけど」
「ほなお前が悪いんやん」
「えー。二三回やっただけやのに、そんな・・」
「知らんがな。ってかほんま、そんなんばっかりやなお前」
「だって遊びですもん」
「遊びって、まぁ、そりゃ遊びやけどな」
「もしかして妬いてくれてるんすか!?」
「しね」
「おれね、女が付き合って、とか言うてきたら、ちゃんとゆうてますもん」
「何を?」
「おれ好きな女おるから付き合われへん、ゆうて」
「へー。」
「それでね、そんときは、だいたい女もフンてゆうんですわ。そやのに、やったらね、なんやしらんいつの間にかベタベタくっついてきよる」
「あらそう。どっちもどっちって感じやね」
「どうですか!」
「は?」
「ぼく。なんかこう、貞操守ってる感じでしょ」
「いや守ってへんやん」
「心は誰にも渡してません」
「あーなんかあんた、メッチャめんどくなってきたなー。そろそろ帰っていい?」
「あ、あ、ウソウソウソウソ!!ウソです!!もう言いません!」
「アハハハハハ!わらかすなー、なんやねんそのとり乱し方!あほかぁ」
「え、ヘヘヘ(笑)」
****
「…ヒロ」
「はい?」
「タバコある?」
「あ、ありますよ」
「マルボロやんな」
「はい。あ、もうこんだけしかないから、全部どうぞ」
「全部もろたらあんたの分ないやん」
「いや、もう買うてあるんで」
「あっそ。ほな貰うな。ありがとう」
「・・・・・・ ・・・・・・。」
「・・・・・。・・・・・・・ーふぅ。・・・・・・・・・」
「・・・・・。・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・。・・・・・・・。・・・・・・・・・。・・なにぃ」
「・・え、いや、格好ええなーおもて」
「何が」
「いや、ミキさんのタバコの吸い方、やっぱ格好ええっすわ」
「なんやそれ(笑)」
「いやほんま」
「そんなんゆわれても、あたしには分からん」
「女でね、タバコ吸うの格好ええ女とか、中々おらへんすよ」
「ハハハ。地やねんから、しゃーない」
「忙しいっすか?仕事」
「うん?・・・うー・・・うん、・・・・スー・・・・。・・・・フゥ。・・全然忙しないで」
「事務やっけ」
「そうそう。オーエルやで。一応」
「はは。でももう結構長いっすよね」
「3年くらいちゃう?」
「あ、まだそんなもんか」
「(笑)」
「居心地ええから?」
「そやなー。まぁ、悪くはないなぁ。経理しながらタバコ吸うててもええし」
「タバコ吸ってるん(笑)」
「うん。だって社長がええってゆうねんもん」
「めちゃくちゃ楽やん」
「そやで。暇なときとか雑誌読んでっからなぁ。もうちょっとしたら潰れるかもしらんわ。零細やし」
「よう辞めさせられへんなぁ」
「あーそれは大丈夫。あたしなんか気に入られてるし」
「そりゃー、まぁ」
「それやしな、社長が従業員とやってるとこ見てもうたし」
「え?なにそれ(笑)」
「前、ちょっと用事頼まれたから、出てた時あってんけどな。帰ったら、なんか社長室の方から声聞こえてきてん」
「うん(笑)」
「ほいでゆっくり近づいて、社長室のドアに耳つけて聞いたんよ、なんか不自然な声やったし」
「ほお」
「ほしたらな、社長がな、従業員とやっとってん(笑)あ!従業員って、あの人やで!あの、あれ、タカサキさん」
「えー。タカサキって誰?」
「なんでー。ちょっと前に、あんたに向かえに来てもらったときあったやん。あんたが、たまたま近くまで来たとかゆうて」
「あー、知り合いん家の帰りやわ」
「そんときにおったでしょうが。あたしの隣に。おばちゃん」
「あ!」
「思い出した(笑)?」
「メチャクチャおばんやん!」
「ちょっ(笑)しかも両方既婚者(笑)」
「えらいグロテスクやなー」
「タカサキさんの艶かしい声が聞こえてきてやで、あんた。そんときのあたしの心中を、もうちょっと、察してみいや」
「(笑)」
「おもろかったなー。ほんでな、しかもあたし、ドアに耳付けすぎてな(笑)、ふっ、ほんでな(笑)、ちょっと近づきすぎてな(笑)、ドアな、開いてん(笑)」
「(笑)」
「あのな、咄嗟のときの人間っておもろいでー。なんかな、人間の本質ってのが見える気がするで。あたしがな、ドアがゆっくり開いてな、足つっかかって、部屋に入ってもうたんよ。ほならな、社長とタカサキさん、バックで合体しててな」
「(笑)」
「ほんで、あたし目の前の机に手をついてもうてんけど、そしたら、見事にその場の空気が一瞬で凍ってんけど」
「ほう(笑)」
「ほんでな、おそるおそる、社長ら見たらな、すぐに二人とも分離して知らんふりしてんねん(笑)下半身まるだしで(笑)いや、ばれてますから!」
「(笑)」
「あれはないわ、ほんま」
「わらかっしよんなー(笑)」
「ほんま、あれなに」
「ほんで社長、だまっといてくれ!ゆうて」
「そりゃもう。嫁パートに出しといて、ようやるでほんまに」
「それ元々出来とったんちゃうん」
「かも分からんな。嫁パートやらせとかんと、会社手伝わせーよって」
「あー、わらかすわ、ほんま」
「まぁね、そういうわけでして、実質あの会社掌握してんの、あたしやから」
「(笑)」
「お金貰えば良かったかなー」
「こらこら」
ジャーン ジャーン ジャーン ジャーン
「電話」
「うん、・・・・・・・・・もしもし」
「・・・・・・・」
「うん、うん。・・・へ。今?知り合いと飲んでる。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・ああ。・・・・・・・・・・・・・うん。・・・・・・なんでやねん。・・・・・・・・・あほか(笑)」
「・・・・・・・・・」
「は?・・・・・。いやいや、全然ちゃうわ。・・・・あー、めんど。・・・・・何、え?」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・うん。・・・・・いや、終電なかったから。・・・・えー。・・・ああ、はいはい。」
「・・・・・・・」
「・・・・・・うん。・・・・・別にええで。・・・・・なぁなぁ。・・・」
「・・・・・・・・・・」
「おい、ヒロ!」
「・・・・・?・・・・なに」
「ちょー代われって」
「は?・・・え?おれ?」
「ああ。ちょいめんどい奴やねん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。・・・・・え?・・・・・え、はぁ。はぁ。・・・・いや、」
「・・・・・・・・」
「そんなんとちゃいますけど。・・・・・・・はぁ。・・・はぁ。・・・飲んでるだけです。・・・え、新世界の。・・・はぁ。壱番って串かつ屋。・・はぁ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・はぁ。・・・・・・・はぁ」
「・・・・ちょー」
「・・・・・・はぁ。・・・・いや、おれあれですわ、昔からミキさんの仲間内で・・・」
「・・・ちょー、貸してみー、ヒロ」
「・・・・・・。・・・・・はい。・・・・・・・」
「・・・・・・・・これでええか?・・・・・・・うん。・・・・はいはいわかったわかった、ほなな。・・・ピッ」
「・・・・・・・・・・何そいつ」
「知らん。めんどいやろ」
「なんかめっちゃ色々聞かれてんけど。え、何、ミキさんソイツと付き合ってんの?」
「ううん。付き合ってへんで」
「でもなんかソイツめちゃくちゃ彼氏面しててんけど」
「ちょっとメンドイやつやねんなー。割かしええ男やねんけど」
「・・・・えー・・・何それ」
「何がよ」
「・・・・・いや、今そういうのいらんゆうてたから・・・」
「へ?だから付き合ってへんって」
「ほなその男なによ」
「たまに遊んでんねん」
「ちょー。なんでそんなイヤラシイことを・・」
「そりゃあたしだって性欲も溜まるからな」
「あんた分かりやすすぎ」
「今電話して分かったと思うけど、結構うっとおしいやろ。・・・・・もうそろそろ切ったろうかな思てんねん」
「切れ切れそんなもん」
「何を不貞腐れてんの」
「うるさい!しらんわ、あほ」
「アハハ。なんであんたが怒ってんのよ。あんたもおんなじことしてるやろ」
「そんなもんなー。・・・・僕がなんぼでも相手したるやんけ!」
「あーほ。誰がお前みたいなガキとするか」
「なんでやねん」
「弱っちいからなー。お子様やもんあんた」
「うるさい!さっきの男なんかおれがしばき倒したる!」
「極真やでアイツ」
「・・!・・・・うそ」
「ほんまやで」
「天満の?」
「どこかはよう知らんけど」
「・・・・・それはぁ、・・・・・そ、そ。そんなもん!、おれがしば・・」
「そろそろ出よか。もう始発動いてるやろ」
「え、ちょ、ちょう待ってーな、・・・・あ、あぁ。勘定せな」
****
「あー、よう食って飲んだなー。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・おい!」
ペチッ
「アイタッ・・」
「何をさっきからふくれてんねん」
「だって」
「何がだってや!あほか。でっかい図体してるくせにウジウジして」
「・・・・・・・・・・・」
「あのな、何回もゆうてるけどな、あんたみたいなガキには興味ないの。な?!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あんたまだ21やねんから、なんぼでも他におるやろ?あたしなんかにかまわんでええから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あーもう。あんた普段は普通やのに、たまーにこういう風になるなぁ。男なんやから、もっとしっかりせえ!!!」
「・・・・・・・はい」
「そう、そう。そんでええねん。シャキっとしとき。男やねんから」
「うーん・・・・」
「あー、ああ。なんか、最後の最後で気分萎えてもうたなー。ノブんとこ行こっかなー」
「え、ノブって誰なん」
「さっきの極真や」
「あかん!!!極真んとこは行かんといて!!」
「アハハ!うっさいうっさい!よし、今から極真とこ行こー!」
「あかんって!!!」
「ほなまたなー!・・・・・って、あ、・・あぶな」
「あ!・・・・・」
「・・・・・・・・・・。・・・おっ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・。・・・・・・・ちょっと」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・。おーい。・・・・・・・ちょっと。二の腕、」
「・・・・・・・・・・・・」
「おい。二の腕離せ」
「・・・・・・・・・・」
「こら!」
「あ、・・・・すんません」
「何をぼーっとしてんねん。変な奴やな。きもっ!」
「ちょっ、きもないわ!」
「ハハハハ。良かったなー。最後にあたしの二の腕さわれて」
「えー・・・」
「しゃーないなー。ええぞええぞ。存分に味わえ」
「?」
「ちゃんと家帰るまで覚えとくねんぞ。その感触を。」
「な、なんでやねん」
「なんでって、二の腕の柔らかさは胸のやらかさってゆうやろーが」
「ちょ!そ、そんなん・・・」
「ええぞええぞ。そんなもん。それでナンボでも、一人でこいたらええがな。ええよええよ。そんくらい許したる」
「あ、あほか!そんなんするか!」
「そんなもんで、またしばらく飲み代おごって貰えるんやったら、お安いモンやわ」
「せこ・・」
「我慢したら身体に毒やで!若いねんから!」
「さっきから若い若いって、おれと四つしか代わらへんやろ!」
「アハハハ!・・・・・・まーあんたが、強なったら考えてやらんでもないけどなー。今のままではないなー」
「えー・・・・」
「まぁ、あんたがごちゃごちゃやってるうちに、あたしはさっさと嫁に行ってるかもしらんけど!」
「え!ちょ!ちょっと、それはないわ!って、あれ。あー、ちょー待ってぇな!送っていくって!」
「ええわ!一人で帰れるっちゅーねん。アハハ!わかったわかった、あんたのキモさに免じて、今日はおとなしく家に帰ってやるから!」
「ちょ、ちょー待ってぇなー!!送っていくってー!!なぁー!!なぁーってー」
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