2010年6月9日水曜日

地軸









朝起きたら巨大な秘密組織が世界を征服していた。おれはとても困ったので実家に相談の電話をかけると、丁度昨日みかんを送ったので食べておくようにと母から連絡を受けた。その後とりあえずコンビニに行って立ち読みをする事にした。某週刊誌を貪るように熟読していると、おれの大好きなグラビアアイドルが今月結婚するという記事が一面になって掲載されていた。おれは頭の中でそのグラビアアイドルと結婚する相手方を口汚く罵った。しかし大好きなグラビアアイドルへの不満は一切なかった。レジでポカリと総菜パンの代金を支払う際に、店員がおつりを手の平に落とすように渡してきた。そのせいで小銭が少し床に落ちた。おれはカッとなってグラビアアイドルの結婚や秘密組織の世界征服などそれまでのストレスを全て店員にぶつけて清々した。店員はというと切ないような顔をしながら困惑気味に「スミマセン」と言った。丁度そのおれに対しての非礼への詫びの言葉が終わるか終わらないかのところに被せるようにして、急遽編制された世界連合軍によって巨大な秘密組織が滅びたとの放送がラジオから流れた。おれの怒りは幾分か収まった。
コンビニから帰宅する途中、おれは道で何者かに突然ナイフで刺された。犯人は黒のストッキングを頭から被っていたので素顔は確認できなかった。刺された際、全ての視界に映るものがスローモーションに見えた。徐々に自分の身体が倒れていくのがとても長い時間に感じた。時計を見てみると秒針が1秒進むのに5秒くらい掛かっていた。
病院で治療を受け数ヶ月の後完治退院したおれは生涯を地下で過ごすことに決めた。地下で暮らし始めてから二日目、携帯が妙になるのでおかしいなと確認してみると電源が入ったままだった。着信は以前価値観の相違から喧嘩別れした恋人からだった。用件を聞くと地下でもう一度自分と暮らさないかという、遠回しに元さやを仄めかす申し出だった。なぜ今更そんな事を言うのかと語気を荒げて元恋人を問いただしてみると、どうやら地上ではすでに別の第二の巨大な秘密組織が世界を席巻征服しているとのことだった。おれは元恋人の申し出を丁重に断った。次の日恋人が秘密組織にさらわれて殺害されたことがニュースになっていた。
地下で暮らし始めて五年ほどすぎた。地下は思いのほか過ごし易いものだった。おれは地下の暮らしに何の不満も感じた事はなかった。そんなある日、地上に出てみようという考えがふと思い浮かんだ理由は生まれもっての単なる好奇心からだった。おれは地下から地上に抜ける唯一の交通手段であるとても長いハシゴを五時間かけて上りきった。地上に出た頃にはおれは大層疲弊しきっており、そんな状態のところを、ハシゴを上りきった地上でここぞとばかりに待ち伏せをしていた第二の巨大な秘密組織の兵に拉致された。もう抗う力は残っていなかった。
第二の巨大な秘密組織が利用する中古のワゴンに乗せられ、おれはとある人里離れた農村に連れていかれた。そこではとうもろこしを栽培していた。これを海外に輸出して組織の大事な潤滑油である軍資金にするのだと言う。そのように第二の巨大な秘密組織の兵は言った。そして第二の巨大な秘密組織にはその頂点に君臨する皇帝の直近に、六人の近衛兵ともいうべき最強の六魔人と謳われる恐ろしい手練がいる事も教えてくれた。おれはその内部極秘情報の提供に対して英語で「サンキュー」とお礼を述べた。第二の巨大な秘密組織の兵は静かに頷き小さな声で「アーハン」と言ったが、心なしかその頬は思春期のような桜色に染まっていた。それから二日後、すでに水面下で活動を開始していた世界連合軍の華麗なる活躍によって第二の巨大な秘密組織は滅びた。丹精込めて育てていたとうもろこしは各々持って帰る事が許された。世界連合軍はその夜、前回と同様にそれは豪勢で豪奢なパーティを開催しその日の武勇を肴にいつまでも宴をやめなかった。戦士たちは互いの勇士と愛国を賛美しあった。そうした喧噪の裏では国家間の闇取り引きがひっきりなしに行われていた。
おれは育てたとうもろこしを試しに海外に出荷してみた。するとこれが驚くような巨万の富を生んだ。おれはそれを元手に大手チェーン店を買収し、更に政界にも幾つものコネクションを張り巡らす画策をした。それらは全て順調に進行した。四年後、おれは一生を豪遊に明け暮れても使い切る事の出来ない富を手にしていた。そんな折友人からの誘いで無人島に旅行に行った。その島には一つの大きな休火山があり、皆でその山を登山した。その際おれは頂上近くで足を踏み外し、ものすごい勢いで転落していった。地面にものすごい勢いで叩き付けられそうな寸前で、おれはそのときすでにサイキックに目覚めていた。その驚異的な力によって危機は全力で回避され、またそれらの諸々が原因で地球の地軸がわずかにずれた。

 




マンション








「よっしゃ。住人がマンション入っていきよる。。あれについて行ったら中は入れるわ。いそげいそげ。…… … ……よし、なんとかオートロックはクリアしたな。……うわァ。。それにしても、やっぱり中のロビーめちゃくちゃ広いなァ。そりゃこんだけ広いねんから、外観もデカいビルに決まってるわ。ほぇー。ロビーの脇には大層な花壇があるがな。赤やら黄やら色んな花がチーンと植えたある。えらいモンやで、えぇ。手入れもチャント行き届いてるがな。ほぉ、なるほどな。さすが難波のど真ん中にデーンと建ってる、家賃20万からのタワーマンションなだけあるなぁ。ここ住んでるヤツは、カタギのくせにえらい給料もろてんのやろなァ。これが世にゆうフユーソーちうやつか。カーッ。おれも一回そういう身分になってみたいモンやなぁ………。」
「……… ……ちょっと。…… ……モシ。ちょっと」
「…… ………それにしても大したモンやで、ほんま。えぇー………」
「モシ。ちょっと。アンタ。」
「……… …… ……」
「ちょっと。そこのアンタ。きょろきょろしてるそこのアンタや。これッ」
「……へ?!… ……あ、あぁ、……な、なんやなんや、わたいのことでっかっ。え。 ……… ……ちょ、なんやねんこのおっさんいきなり。え、もしかして、ここの管理人かなんかか?これは気づかなんだ。。かなんなァ…」
「ちょっとアンタ。うちのマンションで何してまんねん」
「へ?… ……え、いやいや、わたし、こ、ここの住人ですねんけど?今さっき仕事から帰ってきましたんや」
「こらこらこら。アンタ、ウソはいけませんで。えぇ。ワシここに勤めてもう10年以上になりますけどな。ここに住んでる住人さんのことは、ぜーんぶ頭に入ってますよってにな。そやから、誰がここの人か違うかぐらい、すぐに分かるんですわ。アンタの顔なんか、ワシ今日初めてみたがな。何をゆうてんねん。しらこい事ゆうてたらアカンでホンマ」
「え、い、いやいやいや、あのー、あのね。ちゃいますねん。あの、わたしがここの住人ゆうわけやなくってね、あのー、ここ、ここに住んでる人のね、身内ですねん。わたし」
「身内?あ、そうかいな。ほんでどこのお宅の身内で?」
「イヤー。あのね、あのー、なんつーか」
「アンタ、それもウソなんとちゃうやろな」
「いやいや、…これホンマ。あのー、あのね、あれですわ。ヤスダんとこの親戚なんですわ、わたし」
「ヤスダさんとこの親戚?ヤスダさんとこゆうたら、13階に住んでるヤスダさんかいな」
「そうそうそうそうッ!そうやねんッ。13階に住んでるヤスダんとこ。ワタシね、ヤスダのおじさんには、いっつもようしてもろててね。ほんで、今日も、ちょっと昔のお礼があったさかい、それを兼ねて寄らしてもろた、ゆうわけですわ」
「ほぉー。そうゆうわけかいな。それやったら、何も不思議ないゆうことですな」
「そうですねん。わたし、ここ今日初めてきたモンやさかいね、そやから、こんな大きなマンション来たんやけど、どこをどう行ったらええもンかいなー、思てね。ほんでキョロキョロしてたわけですわ。。」
「そうかいな。なるほどなるほど。事情はだいたい分かりました。…… ………そやけど、ほなら、さっきウチの住人さんの後からコソコソ入りなはったんわ、アレはなんでですかいな。インターホン押したらお宅の人出てくれるハズやのに」
「えッ!イヤー、えぇ?あ、あのー。それはね、それはあれですわ、そ、そうそう!どうやら家の人が居てなかったみたいでね!そやからインターホンも全然出てくれへんし。。どないしよかなー思て途方にくれてたところに、丁度、ここに住んでるおばちゃんが入りよったからね、まぁとりあえず入っとこうかなと……」
「あんたが今日来るゆうてるのに、家の人居てはらへんのかいな」
「え、アー、あの、うん。そうみたい、なんでやろうね。アレレ?チャーント連絡しといたのになァー。ハハハハ… ハハ……」
「……… ………ハァ。…… …なんちゅーか、アンタ。。」
「………… ………へ?……」
「たまーにね、おるんよ。アンタみたいな人が。なんやこっそりと、他人のマンション入ってきてね。……いや、何の目的かは知りまへんけどな。こっそりと入ってきて、訪問販売とかする輩がたまにおるんですよ。ここいらの人はお金持った奥様が多いですからな。ウマい事ゆうて物買うてもらおう思てるんでしょうな。せやけどね、まぁ、どこのマンションでも一緒やと思いますけどな、ウチんとこも、そうゆうのは一切お断りしてますのんや。ほやからな、アンタも、あんまりヤヤコしいことゆうてなはるとな、こっちもおまわりさん呼ぶことになるで」
「ちょ、ちょっと、おっさん、あんた何をゆうてんのや?おれはそうゆうのとちゃうて、さっきからゆうてるやろ!?ほやから、おれはね、ヤスダのおっちゃんのとこに会いにきただけ、ゆうてるやん。ちょっとお礼せなあかん事があって、そやから今日会いにきただけなんやがな」
「ヤスダさんに?」
「ほうやがな。あ、アー、おっちゃんに会うの楽しみやなァ……」
「13階の?」
「うんソウソウ…。ふーん、ほんま会うの久々やわァー」
「そんな人居てまへんで」
「楽しみやわなァ、ほんに。。」
「そやから、そんな人、居てぇしまへんで、ちゅうに」
「元気してんのかなー、ヤスダのおっちゃん………」
「そやからね、あんた。ヤスダさんちゅうて、そんな人、このマンションに居てぇしまへん、ちゅうてんねん」
「アァー、ヤスダのおっちゃんに会うの楽しみやなァ。ほんまに楽しみダァー…… ……… ……って、ええェッ!!!」
「ヤスダなんて人、13階どころか、このマンションのどこにも住んでへんゆうてんねん」
「え、そ、そんな、え、エェーッ!……… ……え、エエェーッ!!!」
「何をアンタ、一生懸命ウソの話並べくさって、マァよぅぺらぺらと。よっぽどウソつくのんが好きみたいですな」
「ちょ、ちょ、ちょーーー!……… ……お、おっさん、ほなあんた、おれにカマかけたんかぁ……き、汚いぞーッ!」
「なーにが汚いんじゃ。あんたが勝手にワシの話信じて、ぺらぺらウソ並べて一人で喋ってたんやないかい」
「そ、そんなモンなァ、そ、そんなもん、えぇッ、あ、あんなに話合わせられたら、そんなもん、こっちも調子に乗って喋ってしまうがなッ!」
「ハイハイ。なんや、よう知らんけどな。アンタみたいな若造に騙されるほど、ワシはまだ衰えてはいませんからな。……マァそやけど、アンタ一体ここに何しに来はったん。格好も別にスーツとか作業服でもないし。悪徳業者とは違うみたいやけど……」
「……… ………」
「もしかして、なんか個人的な理由でここに侵入しようとしてたんか?それやったら、こっちとしても、それなりの対応せなアカンよってにな。事件とかになるような事があったら、こっちも困りますのでね」
「ちょ、ちょっと、ケーサツとかは勘弁してくださいッ。どうか頼ンます…… ……………」
「それはアンタの出方次第やがな。……見たところ、アンタ今、30前か過ぎくらいか?まだアンタ若そうやし、さしずめここに彼女が住んでて、痴話喧嘩とかなんかか?それとも、誰かここに住んでる知り合いに恨みがあって、ほんで忍び込んで悪さしようとか考えてンのか?…」
「いや、ちゃいますッ!そうゆうのとは断じてちゃいますッ!」
「ほな、なんやねん」
「…… …………」
「あんたな、こんなに怪しい行動しとってな、ほんでダマーッてても家帰してもらえる思てたら、そら甘いで。世の中舐めてたらあかんで。もしな、このままお咎めなしに帰してやで。ほんで後日またアンタが悪さしにここ来るゆう事があったら、それこそワシの管理責任が問われるのじゃ。ワシはここの住人を安全に管理する義務があるんじゃ。そやからな、あんたが正直に物ゆうてくれるまでは、ここから帰さへんで」
「………。」
「分かったか?」
「…… ……………。………はい……」
「よっしゃ。ほなら、ちょっと管理人室行こか」
「………… …………」





※※※





「ほな、そこ座り」
「…… ………。……」
「えーっと、ほいで、えー。何君て呼んだらええんや」
「…… ………。……… ……えーっと、それは…」
「いやいや、心配せんでもええて。ワシが呼び易いから聞くだけやがな。あんたの身辺なんぞ調べようとか、そうゆうのとは違う」
「はぁ……、そうでっか。ほなら、その、わたし、サトウいいます…… …」
「サトウ君かよろしく。ワシはここの管理人やってます、イワイ、言います。どうぞよろしく」
「…… ……どうも」
「ほんでな、サトウ君。なんであんた、あんなしょうもないウソまでついて、ウチのマンションに入ったんや?なんぞ理由があったんやろ」
「…… …… ………」
「なんや、そないにゆわれへんような理由なんかいな。」
「……………」
「かなんなー。そんなに口固ぉ結びよるつもりやったら、ワシにはもうどうにも出来へんがな。。そんなんやったらほんまに、不審者ゆうことで、おまわりさんの方に連絡することになるで」
「そ、そんな、おれまだ何にもしてへんがな」
「まだ、てあんた、ほなやっぱりなんかするつもりやったんか」
「いや!ちゃいます。そうゆうつもりはありません」
「なんじゃいな、ややこしい人やなアンタは。ほな一体なんでやねん。その理由を話してみなさいて、ゆうてんのや。いやいや、そりゃ、不審者やからゆうて、すぐにおまわりさんが、どうこうしてくれるゆう訳ではないんやけどな、やっぱり管理人のワシとしては、万全を期すことが大事ですねん。アンタが何も話してくれへん以上、アンタを不審者扱いにして通報してもしゃぁないで」
「……… ………」
「あのな、アンタ見たところな、そんなに悪い人間には見えへんのや。ワシはそう思う。10年以上管理人してましたらな、住人を見てるだけで、その人がどんな人間か分かるようになりますのや。その人の表情やら、服装やら、歩き方やら。その人の人柄を知る情報は外見にもいっぱいある。そうゆうのを今まで散々見て来たワシが言うんやから間違いない。アンタはウソはつくけど、悪い人間ではない。そやから、このマンションに来たのんも、なんか事情があるんやろう。それを包み隠さずワシに話しておくれ」
「…… ………」
「………… ……あかんか?」
「………………いや、……あのー。ハイ。……ほな、……ちゃんと言いますわ」
「ほうか、チャント教えてくれるかッ。」
「はい。……………」
「ほなら、なんでこの見ず知らずのマンションにわざわざ入ってきたんや?」
「……………… ………見学ですねん」
「は?」
「…………いや、そやから、見学ですねん」
「………見学?………何のや」
「…………そやから、この大きなマンションの見学ですがな」
「……………いやいやいや。え、見学?マンションの見学て……。」
「そやから、その言葉通りの意味ですわ。おれ、このマンションの見学がしたいな、思て。ほんで、今日ついに思い切って、中に入ってみたんです」
「…………。……あんた、この後に及んでも、まだそんなチンケなウソつきなはるのか?」
「ウソやないんですッ!ホンマの事です!!」
「……………ビクッ」
「……………あ、すんまへん………」
「……………そ、そんな大きな声イキナリ出されたら、こっちもビックリするがな。」
「………………」
「え、エェー。マンションの見学?ワシそんなんゆう人初めて見たわ。。……いやいや、そりゃ、不動産屋さんの関係で、部屋見にくる人は居ますけどな。そやけど、あんた……。アンタのゆう見学ゆうんは、別に住むとかゆう目的ではないんやろ?」
「…………はい」
「けったいな人やなぁホンマ。自分が住むわけでもないマンションを見学したいやなんて…。一体なんでですねん。ちょっとその訳をワシに聞かしとぉくなはれ」
「……………」
「……………………」
「…………わたしね、家がね、このマンションの裏手にあるアパートですねん」
「……このマンションの裏のアパート、ゆうたら、三件くらいあるな」
「はい……。ワシの住んでるのはその内の、ワカサギゆうとこですわ」
「はぁはぁ。ありますあります。そうゆう名の二階建ての文化住宅ありますな」
「はい。そやから、いっつも、仕事から帰るときは、ここの隣の道、通ってたんです。このマンションを横目にしながら」
「はぁはぁ。」
「そないして生活して、もうかれこれ10何年になります」
「ほな何かい、あんたはこのマンションに、そんな昔から、なんらかのワダカマリみたいなモンがあった、ゆうことかいな」
「…………ワダカマリ………。………そうですな、そうゆうキモチもあったかもしれません。なんとゆうか、ここに住んでなはる人は、自分と全く違う生活をしてなはる。おんなじ地面の上に住んでるのに、たったの数十メートル離れてるだけで、人間の生活てのは、こないに違ぅてしまうんかなぁて、なんかよう考えてしもぉてね。」
「仕事の方はうまくいってますのんか」
「まぁ、仕事の方は、おかげさんで細々とやらしてもうてます。………そやけど、わたしには特別に夢中になれる趣味も女もないし……。ふとした瞬間に、なんかこう、世間て世知辛いなァ、思てしまって、あきませんわ」
「………………………」
「いやいや、そんなマイナスな事ばっかり考えてるんとちゃいますで。ここのマンションを見にきたのんは、そうゆうキモチとはちゃいますねん。」
「そうゆうキモチとちゃうて?」
「はぁ。あのー、ホンマ、今日このマンション見にきたんは、そうゆう暗いキモチゆうよりは、純粋に好奇心からなんですわ。………今までわたし、このマンションの横を通るたびに、なんとゆうか、人生の引け目みたいなモンを感じてたんです。平たくゆうと、負け組のキブンみたいなモンです。せやけどね、そうやってこのマンションを見てるたびに、気がついたんですわ。自分がこんなにここのマンションが気になるのは、やっぱりどっかで憧れてるとこがあるんやないか、ってね。………………それやったら、自分にはもう、到底届く事のないところやけど、しっかりと中身がどんなモンかを見てもうて、実際の姿ってのを、この目に刻んでしまおう、思いましてね。そうやって現実を目の当たりにしてしまえば、またそこから色んなキモチが生まれるんやないかなぁと。夢みたいな妄想をキッパリ諦めて、新しく生きて行けるんちゃうかな、とか……………。…………マァー、そんな事を考えてたんですわ。ハハハ…………。よう分からんでっしゃろ?わたしも自分でゆうてて分けが分かりませんわ。。………」
「………………」
「……………まぁ、理由ってゆわれると、こんなとこです」
「……………………」
「………………」
「アンタが…………」
「……………?」
「アンタがそないな事考えながらアパートに住んで、十何年経つゆうて」
「……………はぁ。そうです」
「……………」
「………」
「そうかいな………。………いや、あのな、最初にゆうたと思うけどな、ワシがな、この管理人の職についたのんも、丁度十年前くらいなんや」
「………はぁ」
「そうすると、ワシが職について今まで勤務してきた間、アンタはそないなこと思うて、十幾年過ごしてきたわけやな」
「……… …………」
「……………。あのな、ちょっと、私事ですまんのやけどな。ちょっとワシの話も聞いてもらいたい」
「………おっさんの話?」
「あぁ。…………、あのな、ワシな、もう今はこんなに老け込んでもうてね、マァ、今頃は、普通の勤め人やったら年金とか貰ろて、悠々自適な生活でもしてると思う。そうゆうわけにもいかんと何の因果か、この年までこうやって仕事せなアカン身分です。せやけどな、昔はな、これでもアンタの羨んでるような人間やったんやで」
「…………というと?」
「ウン、昔はな、ワシも大きな仕事当ててな、アンタがゆうようなええ生活をしてたんや。こうゆうビルにも、一つ部屋買うてたりした事もある」
「…………金持ちやったんですか」
「…………そこらにようある話やがな。ワシもそれに違わず、地方から出てきた一文無しの男やったよ。分けも分からず大阪に出て来て、そりゃ、あんたどころの話しやないで。出て来た当時はそれこそホンマ、右も左も分からずキョロキョロキョロキョロ。誰も知り合いがおらんこの街で、ワシみたいな田舎モンが生き残るには、そりゃもう、見つけた目の前の仕事を必死でやるしかなかったがな。」
「……………」
「せやけど、それのお陰で、バブルのせいもあってか、うまいこと世間の波にものれた。お金はよう稼げたし、それなりにも遊んだ。それこそ、あんたのゆうような生活をしてたがな。………あの頃はホンマに夢のようやった。」
「……………」
「ほなけどな、やっぱり、どんなに頑張っても、しょせん田舎モンは田舎モンやったんじゃ。他の遊び事忘れて、それよりも仕事に没頭してた事とか、元々賭け事みたいな事も一切せえへんかった。そうゆう、なんちゅうかな。ホンマの意味での世間擦れみたいなモンがワシには足りんかったんじゃな。都会きて何年おっても、やっぱりワシは青い田舎モンやったんじゃ。」
「………………」
「………そんなある時にな。知り合いに紹介されてな、先物取引に手ぇ出してしもうたんじゃ。…………。…………ほんで後は、これまた、ようある話やがな。ズルズルズルズル突っ込んでもうて、今まで稼いだ金がどんどん溶けていく。バブルははじける。それはもう悲惨なモンやったわ。借金めちゃくちゃこさえて、それに合わせて、家庭ものぅなった。………」
「……………」
「…………。まぁ、そうゆう話やねんけどな。…………… ………どうや?おかしかろう」
「…………いや、おかしいことおまへん」
「ハハハ。そうか?………… ……………ワシはなホンマ、おかしいと自分でも思うんじゃ。」
「………?………何がおかしいのか、わたしにはわかりませんわ」
「ハハハ。……………。…………ワシのな、今の仕事な。 そうゆう事があった後に就いた仕事なんじゃ。…………滑稽じゃろ?なぁ。……… ………あのな、ワシな。自分でもよう分からんのやけどな、多分ワシは、あの頃の事が忘れられへんかったんや。あの夢のような時代。…………。ほやからな、なんとゆうか、往生際が悪いとゆうか、ちょっとでもそうゆうカケラに触れていたいと思たんやろう。気づいたら、こうゆう高層マンションの管理人の職を探しててん。」
「…………。………」
「………… ………… ……………。…………ワシもあんたと一緒や。ワシも十年前からな、ずっとこのマンションに夢を見続けてたんじゃ。いつまでもここの住人とおんなじ空気吸いたいと思うてな。ここで仕事してここの住人のお世話をする事によって、ワシも昔そうやったみたいな、こっち側の住人みたな気になってた。そやけど、そんなことやってても、現実は全然違うんじゃ。家帰っても、身内も誰もおらん部屋に帰るだけじゃ。」
「…………… …………」
「アハハ。……… ………… ……いやいや、なんじゃろなぁ。………… ………なんかえらい、しおらしい話になってしもぉたな。なんでしょう。ワシもこんな話するつもりやなかったんやけどな、なんか、えらい説教くさなってしもうて…………。えらいすまんなサトウ君」
「………… ………いや、……とんでもないです」
「マァ、ワシの話なんかどうでもエエわ。アンタがどんなつもりなんかが分かっただけで、それでエエのんや。やっぱりワシが思うてたとおり、悪い人間やなかった、ゆうんだけで満足じゃ。」
「……… ………………ほなら……」
「ハァ。もちろんじゃ。お咎めは無しじゃ。とゆうても別にアンタは何を悪さしてるわけでもないしな。理由も正直に話してもろたし、こっちとしてはもう、何の疑問もありゃせん。」
「あ、ありがとうございますッ」
「……………うん。まぁええがな。」
「………………ほ、ほな…………わたし、忙しいんで、そろそろオイトマさしてもらいます」
「まぁまぁ、ちょっと待ちぃな、アンタ。こうやって知り合いになったのもなんかの縁じゃ。お昼ご飯まだ食べてへんやろ?…………大分時間経ってもぅたけど、今から出前頼むから、アンタも一緒に食べていきなはれ」
「……………え、…………い、いや、わたし、………いや、結構ですんで」
「なーにをゆうてんのじゃ。年寄りのお昼ご飯くらい付き合ってくれてもバチは当らんじゃろが。わざわざ頼んでんねんから、アンタもそれくらいのお愛想ないと、付き合いてなモンもウマく行きよらへんで」
「……………はぁ…………」
「ほな、アンタはカツ丼でええなッ!」





※※※





「………………………………………。…………………………………………。もうここらへんでエエかいな。………………………ハァー、疲れたァ…………。かなわんなぁ、年寄りの話は。ほんまに話長いねん。フーフ喧嘩は犬も食わんゆうけど、年寄りの話なんか便所ムシも食わんちゅうねん。……………。…………アー、しかし、ややこい爺ィやったわ。まぁなんとか怪しい思われずに済んだけどやで。………… ………………しかし、あのおっさんも阿呆やなぁ。何がスーツでも作業着でもないから悪徳業者と違うじゃ。スーツでも作業着でもない業者なんか、腐るほどいとぉるっちゅうねん。阿呆か(笑)よう、まぁあんなボンクラで管理人なんかしてるわ。おれらのええカモやでホンマ。しかもおれの作り話ゼーンブ信じとるし、救いようがないなァ。そりゃ先物なんかに手ぇ出すわ。……あんなモン、素人が損するように出来とるんやがな。……………ほんっまに馬鹿正直な情けないジーサンやで。……………。アーア。阿呆なクソ親と重なるわ。気分悪ゥ……。………。……。……………。カツ丼はウマかったナ。腹へってたし、丁度良かったわ。割りと美味しかったしな。あそこの店の名前、ちゃんと聞いとけば良かったわ。………。マァでも、もうあんな阿呆で話長いおっさんはウンザリやしな。あのマンションは避けとったろ。マサにらにもゆうとかなな、このマンションはペケや、ゆうて……………」


 



子供










「なぁ、おとうちゃんー」
「・・・・・・・」
「なぁ、おとうちゃんてー」
「なんじゃい」
「あのなー、えっとなー」
「ほぉ」
「あのなー、えっとなー、ヤマダ君がなー」
「ほぉ」
「えっとなー。・・・えっとー」
「なんやユウコ。お前言いたいことさっさとゆわんかい。おれのムスメやろが」
「えーっとなー。あのなぁ、ヤマダ君がなぁ」
「ほぉ。」
「昨日な、ヤマダ君と遊んでたらなー」
「おい、ちょい待て。ヤマダ君て誰や」
「ヤマダ君てなー。えっとなー」
「おーい」
「・・・・・・・・・・・」
「おーい。ヤマダ君って、どこのどいつや」
「ヤマダ君ってゆうたら、あれ、あのコやないの。保育園の隣のタバコ屋さんのコ」
「おーおー。なんやそれ、アイツか。グルグルメガネのことかいな」
「グルグルメガネて・・」
「おいユウコ。ヤマダ君ゆうたら、あの、ガリベンのグルグルメガネのことか」
「えーっとなぁ、ヤマダ君とな、いっつもなー」
「ようユウコらと遊んでるんやないの。」
「なんじゃいな、グルグルメガネ。うちのユウコのことが好きなんか。っちぇッ。身の程を知れっちゅうねん」
「ユウコえらい可愛がられてるみたいよ。ヤマダ君一つか二つ上やったんと違うかしら」
「だーれが、あんなガリベンみたいなヤツにユウコ触らすかぁ。のぅ、ユウコ。オマエ、グルグルメガネがごちゃごちゃゆうてきても、相手したらあかんぞ」
「お、おとうちゃんー」
「おう。ほんで。えぇ。グルグルメガネがどないしてん」
「ヤマダ君がなー、・・・」
「ちょ、ちょっと待て。オマエ、ちょっと。グルグルメガネ、ゆうてみい」
「えーとなー」
「ほやから、ちょっと。グルグルメガネ、ゆうてみぃて」
「・・・・ぐるぐる、めがね」
「よっしゃ。ほなら、ヤマダ君、ゆわんとソイツのこと、グルグルメガネゆうて話せぇ」
「ヤマダ君がなー」
「ちゃうちゃうちゃう。グルグルメガネがなー、て」
「ぐるぐるめがねがなー、昨日なぁ」
「・・・・・・。・・・・・・・・・・ユウコ。誰と遊んでてん」
「・・・・・・・ぐるぐめがね・・・がなー」
「・・・・・・・・・・・・誰と遊んでてん」
「・・・ぐるぐるめがねとなー、昨日なー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あのなー」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちょっと、子供にアホなことゆわして、一人で爆笑するのやめてよアンタ」
「・・・・・・・・・・・・・・あー、おもろ。ふぅ。・・・・三才のガキが一生懸命、グルグルメガネ、ゆうて(笑)」
「おとうちゃん」
「あーあ。おもろかったナー。よし、ほな、ちょっとアッシは横にならしてもらおかなと」
「おとうちゃんー」
「もぉー。なんじゃいな、ハイハイ。おとうちゃん寝るからな、今から。・・・・・ちょ、ちょー、そんなに揺するなぁ」
「あのなー、ぐるぐるめがねがなー」
「ほおほお。ほんでグルグルメガネがどないしてん」
「昨日、公園で遊んどったらなー」
「ほお。そやから、それがどないしてん」
「なんかなー、東京怖いねんて」
「東京怖い?なんじゃそれ」
「東京、怖いてゆうねんて」
「東京怖い?グルグルメガネがそないゆうんか」
「怖いねんて」
「なんじゃそれ。おーい、グルグルメガネが、東京怖い、ゆうんやとー」
「・・・・・・・・・・」
「ちぇ、無視しよる。。。へー。そうかそうか。ほー。マァ、そりゃ、そういう見解もあるかも知れんけどのー」
「大阪より怖いのん?」
「ハッ。んなことあるかいッ。東京モンなんかいっこも怖ないわい。なんでやねん、そんなモン。えぇ。東京なんかな、アレ。人間ぎょうさんおるけどな、アレ、アレな。全部地方の田舎モンが集まってきてんねんぞ。えぇ。あれ全部田舎モンやがな。東京とかユートルけどな、あれ全部、あれや。アメリカみたいなモンや。トキオーゆうて、格好だけシャンとしとるようなモンじゃ。えぇ。ほやからイッコモ怖いことなんかないねんぞ。」
「ヤマダ君が東京は怖いゆうてぇ」
「怖ないちゅうねん。えぇ。そんなモンな、えぇ。ユウコ。オマエにいっつもゆうてるがな、西成のオッサンの方がよっぽど強いねんからな。東京モンなんか怖ないわい。のぅ。ユウコ、お前、この前、西成のオッサンにジュース持ってくるの手伝ってもろたやろが」
「・・・・・ジュース持ってくるて、何かあったの?アタシその話しらん」
「いやな、この前、ワシとユウコで西成に串かつ食いに行ってたんや。ほんで、ワシ、ちょっとオレンジジュース飲みたなったから、ユウコに自販機に買いに行かしてん。」
「ちょっとぉ。店にもあるんやから、そこで買うたらええやないの」
「うるさい。店のは高いんじゃ。ほんでな、一人で買いにいかしたんよ。ほならな、アレや。そのジュース、カップに入ったやつやからな。二つ買うたけど、ユウコ、うまいこと持てへんかったわけよ。」
「はぁ」
「ほんで、それでもちょっとずつ、ちょっとずつ歩いてたんやろなぁ。ほなら、近くにおったオッサンがな、一つ持って助けてくれてな、ワシのところ来たんや」
「あらそう、そりゃ良かったねぇ」
「オッサン優しかったなぁ、ユウコ」
「うん」
「ほんでちゃんと有難うゆうたな」
「うん」
「えらいね」
「うふ」
「大阪のオッサンはな、ユウコ。強いし優しいんやぞ。駅の構内でジャリ銭ぶちまけても、いっこも助けてくれへん東京人とはえらい違いじゃ」
「ジャリ銭ぶちまけたんかいな。アホやなホンマ」
「ウルサイッ!あのときのワシの惨めでかつ悲しくも切ないキモチといったら・・・」
「アホちゃうか」
「天王寺でぶちまけた時はなぁ、えぇッ。オジンもオバンも、ネェちゃん兄ちゃん、そこらにおるヤツ全員、皆こぞって拾ってくれたぞッ!」
「それ絶対ちょっとネコババされてるやろ」
「されてへんわッ!ちゃんと数えたわい」
「かなんなぁ、アンタ。。ホンマ、アンタにはもう、あんまりお金もたせたらアカンなぁ」
「まぁ、そやけど、ユウコ、お前は女のコやからな。お母ちゃんの子供や、絶対美人になるがな。ほやからな、これから大きいなったら、どこ行っても、悪い虫が来よるわ。な。」
「・・・・・・おとうちゃんー」
「ほだからな、お前が大きなって東京行くことになってもな、コイツ変やな、思たりな、ウマイ事ばっかりゆうようなヤツが近寄ってきたらな、えぇ。な。そんときはな、そういうヤツの話はな、あれや、もう、話半分に聞いとくんやぞ。な。まともに相手したらイカンぞ。」
「・・・・・」
「お前は女のコで力弱いねんからな、そうやって自分を守っていくんじゃ」
「・・・・・?」
「アンタ、ユウコ全然分かってへんやないの。分けの分からん話を小さいコに教えんといてください」
「な、話半分やぞ、な。アレや。半金半手みたいなモンや。えぇ。な、そやないと、先方怒りよるからな」
「なんの話よ」
「グルグルメガネもな、そないして、つかず離れずウマイことしたらな、物買うてくれるかもしれんからな」
「コラッ!子供に変な知恵教えるな!」




ビジネス










「シャチョー」
「なんや」
「この前頼んでたプログラム出来ましたって」
「プログラム、て、なんやったっけ」
「自動で送ってくれるやつ」
「はぁはぁ、いっぺんにメール送れるやつやな」
「はい。」
「ほうかほうか。ほなまぁ、あとは首尾ようしといて。…ほんで、ぎょうさん送れるゆうてたか?」
「そりゃもう、なんや自信作とかゆうて、えらい意気込んでましたで、キノシタさん」
「そりゃ、前のより改良しててもらわな。ほやけどそんなに自信あるゆうことは、ちょっとフッかけてきようか分からんな…。あのおっさん、ホンマこっちの足下みよんねんから。やらしいやっちゃで」
「まぁその辺は、ワタシがなんとか交渉してみますわ」
「おお、頼むわ」
「あ、そうそう、ヨコちゃんからね、昨日シャチョー帰った後に電話あったんですわ」
「はぁ。なんて?」
「いや、シャチョー、もうちょっと、なんかしたいゆうてましたやろ。別の業種でなんかしたいゆうて」
「ああ、ゆうてたけど」
「昨日ね、仕事のことでヨコちゃんから電話もろた時にね、そのことでちょい話してたんですわ。ほならね、ヨコちゃんのとこもね、どうやら、ちょいちょい新しい仕事してますねんて」
「え、そうなん?ワシあいつから、いっこもそんな話聞いてへんで」
「いや、このことはまだ全然ほかの人には話してへんて、ゆうてましたわ。まぁそりゃ、金にならんこと人に話てもしゃーないですからな。とりあえず、そこそこやってみて、ワタシらに話したかったんとちゃいますか」
「ほー、そうかいな。……ほやけど、ヨコのとこなんか、アダルトサイトで結構もうけてんとちゃうんかいな」
「いやいや、あの辺ももうあきまへんねんて。結構出尽くした感があるから。まぁほんでも、あの人のとこのサイトは割りと流行ってるから、それなりに儲けてるとは思いますけど。まぁウチとおんなじで、新しいこと始めたいんとちゃいますか。どこもそうや思いますけど」
「まぁな。ウチかて出会い系ばっかりやっててもしゃあないからな。ウチらみたいな業界はみな水モンやしな。… …え、ほんで、ヨコは何ゆうててん」
「はぁ、それがね、訪問販売ですねん」
「は?訪問販売?」
「はぁ。ジジババ狙て畳とか売りつけとうみたいですわ」
「タタミぃ?タタミて、またようわからんモン売りつけとうな。なんやそれ」
「いや、物は特にこだわってないんですって。タタミの他にも化粧品とかゆうてましたわ」
「はぁー。また中華囲って色々作らしてんのやな?」
「そこまでは聞いてまへんけど、多分そうちゃいまっか」
「へー。でもホンマ、今更やな」
「そうですねん。ワタシもさすがに聞き返しましたがな。訪問販売?ゆうて」
「ほんで、それ儲かってんのかいな」
「それなりに利益出てるみたいでっせ」
「ほんまかいなそれ(笑)適当にゆうてんちゃうん(笑)。そんなモン、ウチより危ないことやってるがな。ヘタしたらシャレならんで。それやしもう昔みたいとちゃうねんから、その辺の仕事ヤバいやろ。」
「いや、どうやらまだイケルみたいでっせ。一時期訪問販売ギャーギャーゆうてましたやろ。ほなけど、もう今テレビでもあんまゆわんようになってるから、警戒してへんオバンとか、結構いてるんですって」
「そうなんか」
「それなりに格好とかキチッとしてたら、すぐ買うみたいでっせ。オジンとかオバンて、寂しいからね、情に訴えたら割りとコロがるみたいですわ」
「そんなもんかいな」
「あとなんか、二三回は通たり、電話してやった方がええんですって」
「マジで?」
「はぁ。なんか信用させるためとかゆうてましたけど」
「えー、そんなんやったら割れてまうがな(笑)」
「ですね(笑)」
「なるほどなー。まぁ、オレオレとかはまだヤバいやろうけどな…。ほうかほうか…、昔のやり方でも、時間置いたらまだ出来たりすんねんなぁ」
「はい」
「訪問販売か…。なかなかのビジネスやなぁ。ちょっと考えてみるか」
「そうですね。… …えーっと、まぁ、そんなモンかな、シャチョーにゆうとく事は…」
「あ、今日は別にどこも行かへんから、かまへんで。またなんかあったら声かけてくれたら。ワシ部屋いてるから」
「はい、わかりました。… ……。…… …なんや、何してんねん」
「… …?…… ……」
「コラー!お前らデッカい声出すな。うるさいんじゃ。そっちで何やってんねん!」
「…… ………どないしてん」
「いやなんか、ユミちゃんらちゃいますか。えらい騒いでるみたいですね。なんやろ」
「何やってんねん。ちょう見に行ってみよか。……」
「はい…。………」
「………。……、おいユミ、お前ら何ギャーギャー騒いでんねん。仕事せんかぁ」
「あ、シャチョー(笑)」
「何をニヤニヤしてんねん。お前ら仕事せんとあかんやろ。さっさと客のポイント使わせんかいや」
「いや、あのね(笑)こいつこいつ!」
「あ、どないしてん」
「ちょっと、ブチョーもみてーや(笑)このタケルゆう男!」
「ん、どうしたんや」
「コイツな、めちゃくちゃアタシと会いたがっててな、ホンマウザかってん!」
「はぁ。ソイツどこの男?」
「山口」
「へぇ。そんなモン、適当にあしらっとけや」
「うん、そうやねんけどな。てか、そもそもあたし今使ってんの、岡山やねんけど」
「ほな適当に焦らしたらええやないか」
「あんまりウザイから、会う約束したった(笑)」
「は?ほな何かい、ソイツ、山口から岡山にわざわざ会いに来よるんかいな」
「そうそう(笑)」
「はぁー、そりゃご苦労なこって。かわいそうにのう。こっちは大阪おんのに」
「コイツほんまキモイねん!なんか、今どんなパンツはいてんのーとか、最近エッチしたのんいつ、とか根掘り葉掘り聞いてくるねんけど」
「そんなもん、別にソイツに限ったことちゃうやろーが」
「いやいや!なんか、コイツの聞き方とかホンマ超キモイねんから!なーリンちゃん!」
「うん、ほんまキモイでコイツ。ほんでな、アタシら、ほんま腹立ってきたから、ちょっとコケにしたろ思てな、」
「そうそう(笑)ほやから岡山よんだってん。」
「余計なことすんな」
「だってー」
「ほな、そいつ今一生懸命高速乗って来てんのかいな」
「そう(笑)ざまーみろやわ!」
「お前、そいつ退会してもうたらどうすんねん、アホか」
「でももうやってもうてんもーん」
「まぁ、もうええがな。やってもうたモンしゃーないわ」
「シャチョー、ちょっとコイツらに甘いですわ」
「イエーイ、イエーイ!」
「うるさいわ、アホ!」
「ハハ。まぁ、ちょっとは息抜きもええけど、他の奴はウマいことやってくれよ」
「さすがシャチョー!話分かるわー」
「調子にのんな」
「あ、そうそう、ブチョー」
「なんやリンちゃん」
「あたしのやってる奴で一人、金滞納してる奴おるで」
「お。どいつや」
「えーっと、… ……こいつこいつ。ユッピーってやつ」
「ほお。オッケー、分かった。ちょーそいつのIDメモっといてくれや」
「はーい」
「シャチョー。督促業者って今の時間帯いけましたっけ?」
「おう。大丈夫やで」
「分かりました。ほな、後から電話しときますわ」
「よっしゃ、頼むわ」
「…… ……あ、せやせや、あの書類も貰とかなアカンの忘れとった」
「……!、…ほんまや、ワシも忘れてた。ちょー、ワシの部屋取りに行こ」
「はい。………」
「…… …… ………」
「…………」
「…… ……」
「………… …………しつれいしまーす」
「おーう。……ちょー、そこ座っといて」
「はい」
「えーっと、……… ………。………ちょう待ってな。えー、あれぇ。どこ置いたっけなぁ……」
「…… ………」
「えー、…………。………お、あったあった。」
「しかしアレですなぁ」
「……?何がいな」
「いやね。督促のお兄ちゃんらも、大変やなぁ思て。」
「そうか?いっこも大変ちゃうわ」
「そうですかねぇ。いっつも怒鳴らなアカンし」
「大変なことあるかいな。アイツらあれが半分趣味みたいなモンやからな。」
「もう、あんなに怒鳴るん、ワタシやったらしんどいですわ。それやし、相手に何されるか分からんし」
「まーな。それが一番危ないからな。金払えへん奴とか、結構切羽詰まってる奴多いから。まぁ、そやから、ワシらだってそれだけの金払ろてんのやから。ちゃんと働いてもらわなこっちも困るわいね」
「そうですな。」
「まぁ、たしかにずっと気ぃはっとかなアカンのはシンドイけどな。」
「それやし、ワタシやったら、相手が怖いやつやったら、緊張して取り立てできるかどうか」
「それはお前、そんなモン、慣れやがな」
「そういうモンなんですか?」
「そりゃそうや、何でも慣れやで、そんなもん。」
「いやいや、あきまへんわワタシなんか。生まれてこの方、ノミの心臓やねんから。いっつもビクビクしながら暮らしてますわ」
「ハハ。大丈夫やっちゅうに。ワシだって勉強してんねんから。そう簡単には捕まるつもりはないで。あのな、ブチョー。こういう業界はイタチごっこみたいなモンやねんから。いつでも言い訳できるように、理論武装はしとかなアカンねんで。せめて、自分のケツは自分で拭けるようにしとかなな。ほやから、お前にもいっつも本貸したりしてるやろ。……ワシのゆう通り勉強しとったら大丈夫やから。」
「ハイ、ほんま、そうゆうとこは、シャチョーに世話なってます」
「いやいや、そんなに改まんなや(笑)あとは、そうやなぁ。緊張とか、そういう気持ちの面は、これはもうほんま、慣れしかないでやっぱり」
「そういうモンですかね」
「そうや。ワシかて会社作ってから、色々あってそういう経験で強なってきてんから。何も最初っから色んなこと知ってんのとちゃうで。顔は普通の顔してたけど、内心ビクビクしてたときも、そりゃあるわいな。…… ……、あれや、タイガーウッズおるやろ」
「タイガーウッズ?」
「おう。おれな、あいつ見てていっつも思うねんけどな、あいつこそ、ほんまに天才やねん」
「そりゃまぁ、ゴルフの才能は、とてつもないんとちゃいますか」
「いやいや、そういうこととちゃうねん。タイガーウッズってな、どんなものすごい大会に出ても、全ッ然緊張してへんやろ。いつもと同じような仕事を、ちゃんとキチーッとしよる。あれな、並の選手、というてもやで、世界で戦うような選手でもやで、やっぱりでっかい大会になったら、多少なりとも緊張するモンやないか。それが人間ってモンや。ほやけど、そもそも、アイツには緊張って概念がないんかもな。それかあれや、もう、ほんまにもう、通常の人間よりもよっぽど、心が強くて、そういうブレる心を抑えつける事ができるんか。なんにせよ、あれはもうとてつもない才能やと思うで。滅多におらん才能やわアレは。」
「なるほど」
「でも、そんなすごい人間は極めて稀やで。普通は緊張したり、動揺すんのが人間やわいな。」
「… ……なんか、そう言われると楽にモノ考えられるような気ぃします」
「そやろ。あんま気張ったらアカンで。考えすぎたらシンドイねんから」
「はい。ありがとうございます」
「おっしゃ。…… ……よし、ほな、はい書類」
「ありがとうございます。あ!シャチョー」
「おいおい、まだなんかあるんかいな(笑)」
「あ、いやいや、これは全然ちゃう話ですわ」
「何ぃ」
「ユミちゃんええコでしょ」
「ああ、そうやな。ええコやな。ブチョーの飲みに行ってたクラブのコやんな」
「まぁ、そうですわ。ワタシの知り合いの店のコですねんけど」
「ひとなつっこいし、可愛いし、ええんちゃう。人気あるやろ」
「そうですね。いや、ほんでね、そういやアイツ、今月で今おる家出ないかんとかゆうてましてね」
「ほお。なんでやねん。家賃払てへんのか」
「いや、ちゃいまんねん。なんか、女友達のとこに居候してるらしいんですけど、そろそろ出て行かなあかんらしいんですわ。」
「は?アイツ自分家住んでへんの?」
「はぁ。アイツ家ないんですって。なんやそうやって、知り合いの家渡り歩いて生活してるみたい」
「なんやそれ!アーバンジプシーゆうやつか」
「はぁ。ほんでね、どうしたらええんやろゆうて、この前世間話してましてんけどな。ほんで、そういえば、十三の方のシャチョーのマンション、今空いてるんでっしゃろ?ユミちゃん、住まわしてやってくれませんかね」
「アラアラ、なんじゃいなそれ。なんちゅう家なきコやねん。かなんな最近の若い女は。」
「はぁ、ほんまに。まぁ、そやけど、ユミちゃんもシャチョーの事気に行ってるみたいやし、丁度ええんとちゃうかなー思て」
「おいおい、ワシの都合ムシすんな」
「あ、いやいや、そういうつもりは」
「まぁ別にかまへんけどな。最近全然使てへんし」
「もうマリーの女とは切れましたしね」
「大きなお世話じゃ阿呆(笑)。オッケー。ええで。ほな、ワシから声かけとくわ。まぁ、今誰も使てへんし、気楽に使うてかまへんからな」
「おー。助かりますわ」
「おう。」
「有り難うございます、……、あ、ほな、そろそろ戻りますわ。失礼します」
「はいよ。」
「………… ……(部屋を出る)」
「はぁ。…… ……… ………さてと。………。……… ………あ、ちょっとヨコに電話しとこかな。……… ………… …………」
 




京阪と鉄塔









「って、おいやめろや!静かにしろって!落ち着け!」
「なんでやねん、こんなもん、お前、落ち着いてられるか!おいおいおい、お!」
「・・・・」
「ちょー待てや!おい、ちょー、お前らマジで知らん振りしとけよ。・・しー。。あくまでそっけないフリしとくねんで。・・・・オイ、カズキ!ジロジロ見るな!」
「ちょ、お前、なんでやねん!こんなもんなー。じっとなんかムリやろー!えぇ、この殺人的なアングルはなんやねん、えー?・・。ほ、ほんまに、乗ってくる人のパンツが、こ、ここの窓から丸見えやないか!なんやここは!」
「だー!だから、お前、もうちょい黙れって!大きい声出したらめっちゃ浮くから!恥ずかしいやろ!コラ!じっとしとけ!おい、ちょー、マー君、カズキの腕押さえとって」
「うん・・・。ちょ、お前ちょっと静まれ!コラ!サカリのついた猿!」
「ぎゃー、何すんねんアホー!お前らも、もうちょっと自分に正直になれー!若さはおれらの特権やろがー!この衝動を大事にせんで何が青春じゃー!」
「ちょー、こ、こいつなんでこういう時だけ力強いねん・・」
「だーっ、だからこいつ連れてくんの心配やったんやー。。しゃーない、もう予定変更や。今日は見るのやめ!目隠ししとけ目隠し。マー君、カズキの手ぇ押さえて、更に目隠しや!発車するまで外したらあかんで!」
「うおー。。すげぇ!京阪すげぇ。二階建ての車両って、こんなん客乗ってくるとこが一階の窓から丸見えやないか!ホームから座席が低すぎるやろ!・・・・ホンマどんな設計やねん・・・・・これ考えた車掌さん天才やな・・・アァー、こんなもん、初夏の暑さなんかそっこー吹き飛ぶわ!・・はよう若いキレイなお姉さん乗らへんかなー。スカート短いオネーサンこーへんかなぁ!」
「あ、アカン・・、ノブちゃん、・・押さえられへん、力強すぎやわコイツ・・」
「うぅ・・、ほんまや、こいつの力なんやねん・・」
「・・・・オイオイオイオイ!ノブ!マサ!女子がこっち歩いてきたぞ!乗ってくるんちゃうか!」
「マジで!!(二人同時)」
「・・・おい、アレどこの制服や」
「うーん、どこやろ。。よう分からんなー」
「・・・・・」
「マサ分かる?」
「・・・・・・なんとなくやけど、尼の方の女子高ちゃうかな・・。」
「・・・・えらい制服詳しいなマー君。なんでお前そんなん知っとんねん」
「え!・・いや・・、なんつーか、前に、その・・、尼のコらと飲み会みたいな事あって・・」
「おいコラ!おれに内緒でいつのまにそんな事やっとったんや!」
「ヒィ!ゴメン!」
「ほほー。なるほどな。後ろの二人はケバいけど、前のコ可愛いなー。。おれああゆう清純なコ好き」
「・・・ほ、ほんまやな!たしかに清純系でカワイイ!」
「ちょ!ちょっと、おれにも見せてーや」
「おおー(二人同時)」
「清純なコがぼちぼち乗ってくるで!」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・。・・・・・・
・・・・・白!!!!(三人同時)」
「イエーイ」
「イエーイ」
「イエーイ(それぞれハイタッチ)」
「これかなりレアちゃうか?!」
「おれは今歴史を目撃したッ!」
「・・・・・・・・・」
「イエーイ」
「イエーイ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「これはもうマサの家でお祝いやな!今日は勉強会なんかなしや!」
「おう!そうしよそうしよ!今日はマー君の家でパーティや!!!」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・?・・・・どないしたんマー君」
「どないしてん」
「・・・・・・・・・・ヤバイ、ばれてる」
「嘘ッ!?」
「・・・・・・・・・・、うわっ、こっちガン見してるやん」
「・・・・・・・・と、とりあえず会釈しとけ(会釈)」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・あれ?(ドキッ)」
「・・・・・・アレレ」
「・・・・・・・・・ちょ、ちょー、何今の!見た!?」
「・・・・・見た見た、何あれめっちゃカワイイ・・・」
「・・・・・・・・・・」
「ス、スカート押さえて、こっちに向かってなんかゆうてきてたで・・。恥ずかしがってなかったか?」
「ウン・・・恥ずかしがってた・・・・・。もう、とか、なんかちょっと、こっちに喋ってきてたな・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・何あの恥じらい方・・可愛すぎるやろ・・・・・。何あれ。」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・。・・・・・おい」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・おい!」
「(ペチンッ)アイタッ!」
「マサ、お前放心しすぎやろ。まぁ気持ちは分かるけど」
「めちゃくちゃ可愛いかったなぁ。」
「ウン」
「・・・・さすがのおれも今のはちょっとビビッた、惚れそうなった。・・・・でも、なんかちょっと男慣れしてそうやな」
「あー、たしかに。だって全然知らんやつにあんな媚びた顔するか普通?」
「あれは中々の女やで。もうちょっと成長したらええ女になるはずや。・・・魔性の女やな。オーコワ!」
「ガリガリガリクソン」
「(笑)」
「はぁ、まぁええモン見せてもうたわ。くわばらくわばら」
「ちょ(笑)なんでオマジナイしてんの」
「え、ちゃうかったっけ?!まぁええわ。なんかこう、拝みたい気分やねん!キリストに!」
「ちゃうちゃう、そこはアワテナーイ、アワテナーイ、ヒトヤスミヒトヤスミ!」
「一休さんもチガイマース」
「あなたダレデースカ」
「ペリーデース。クロフネー。ワタシモエエモン見たワー」
「ちょっと!」
「へ?」
「うん?」
「?」
「あんたら、下から覗いてたやろ」
「・・・・え」
「・・・・・・・・」
「・・・・・」
「おい!聞いてんのか?!あんたら下から覗いてたやろ!ゆうてんねん」
「・・・・・な、なんのことやら」
「とぼけんなや!!ウチら見ててんからな!」
「何をでしょうか・・・」
「まだトボけようでコイツら。なんなん、サイアク。・・・トモコのスカート、下から覗いたやろって、ゆうてんねん!」
「トモコて誰?」
「さっきあんたらが覗いたコや!」
「・・・・・、そのコ、いてへんけど」
「ウルサイ!あたしらが代わりに来たったんや、エエ加減にしときいや、あんたら」
「は?!そんなもん、覗いてへんわ!」
「何ゆうてんのよ!あんたら覗いてたやろ!」
「何わけ分からんことゆうてんねん、お前ら。おれら覗いてへんで!なぁ、カズキ。おれら、普通に席に座ってただけやっちゅうねん。」
「あんたらなぁ!ちょー、マユちゃんも一緒に文句ゆーてーや」
「うん、あんたら、乗ってくる人のスカート覗こう思て、この席座ってたやろ!キモいねん!!」
「は?!ちょー待てや!おれら普通に席に座ってて、喋りながら外見てただけやん。そんなもん、この車体の低さやねんから、イヤでも見えてまうことだってあるやろ!そんなもんおれらのせいとちゃうやんけ!文句あるんやったら電車二階建てにした車掌さんに文句ゆえや」
「む・・・・・むかつくー!なんなんこいつら・・・・・」
「てゆーか、お前らのパンツなんか見たないし!ケバいねんお前ら」
「なんなん!腹立つわー、あんたらどこの高校なん、この制服・・・。ちょーリョウらに言いつけたろか、ほんま」
「ほんまやわ。ちょっとゆうたったらええんちゃう」
「・・・・・・・・・・はい?」
「あんたらみたいな奴、ちょっとシメてもうた方がええわ。あーしの知り合いに言いつけたる」
「・・・・・・ちょっと、・・・・ちょっと待ってえな」
「何がよ!」
「いや、その・・・・ちょっと待ってくれませんでしょうか」
「ウルサイ!!あんたらみたいな、中途半端にいちびってる奴が、ウチらほんまにむかつくねん」
「いやいやいやいや、ちょー、ちょー待ってえな。・・・あのさ、おれらの話やのに、他人が割り込んでくるとか、・・・そうゆうの、どうなん?」
「はー?なんなんあんた。今更下手にでよんの?」
「サイアクー」
「ほ、ほなもう、二階行こうぜ。こんなにギャーギャーゆわれても、うっとおしいだけや」
「おうおう、行こ行こ」
「ちょ!あんたら、待ちーや!」
「はいはい、ちょっとスンマセン。はいはい、どーも」
「ちょっと失礼ー。・・・あ、どうぞここ座って下さい」
「・・・・・・・・・」
「・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「はー。あーうっとおしかった・・」
「なんやアレ!ウザすぎんねんけど」
「ウットーしかったぁ・・」
「ほんっま!なんでああゆう女って口だけは達者なん?!」
「腹立つなー、ほんま。何?おれらがお前に何してん!」
「誰もお前らのパンツなんか見てないっちゅーねん!」
「ほんま、ブスの嫉妬は見苦しいのー。」
「あれ、ブスと清純系って友達なんかなぁ。」
「そりゃそうやろ。一緒に電車乗ってきたし。トモコってのが清純系の名前なんちゃう?」
「トモコちゃんかー・・。あのコ可愛かったなぁ・・」
「あれやで。トモコちゃんが可愛いからって、その嫉妬の怒りをおれらにぶつけてきたんやでアレ」
「かなんなー」
「嫉妬8割、友達の為2割」
「友情少なッ!」
「あー・・」
「なにぃ」
「どないしてんマサ」
「急いだから、下に荷物忘れてもうた」
「荷物って何」
「ジャージとか」
「あほやなー」
「アイツらおるかも知らんぞ(笑)またギャーギャーゆうてきたら、ソッコー逃げろよ」
「う、うん。あー、バリだるい・・・」






***






「なんやねんほんま。おれらおった所チャッカリ座りやがって。何が早よしてじゃ!えっらそうに。アホか!死ね!あー。腹立つ。・・・・これだけで間違いないな。もう忘れてないやろな・・。よし。大丈夫やな。はぁ。なんかテンション下がるわー・・・・。・・・・・・・」
「あいた」
「おッ。あ!すいません」
「・・・・・・・・あ。」
「あ!」
「・・・・・・・」
「・・・・・す、すいません!!」
「・・・・・・・・・・・・。なにが(笑)?」
「え、・・・いや、あのー・・・・、」
「(笑)」
「えーっと、その、なんつーか・・・・・・・」
「あんたら下から見てたやろ」
「いや、えー、いや、それはたまたま・・・」
「なんかハイタッチしてたやん(笑)」
「!!・・・・・もしか、見てた?」
「そりゃー、あんだけ喜んでたら」
「・・・・・・・・・・す、すんません」
「人のパンツ見て、どんだけ嬉しがるんよ」
「それはまぁ、なんてゆうか、カズキが見たいゆうから・・」
「カズキって、なんか一番はしゃいでたコかな」
「そうそう。アイツが見たいとかゆうから、ほな今日京阪乗れるしおれんち来る?って話なって」
「こっち住んでんの?」
「うん」
「あたしらもやねん。」
「・・・・マジで・・・。これから電車で会ったりしたら、めっちゃ恥ずいねんけど・・」
「もう顔覚えたし」
「ちょ!!あのさ、マジで勘弁してくれへん?・・・・・なんか、ジブンの友達が、男に言いつけるとかゆうてんねんけど、許してくれへん?おれらマジ普通の高校生やから、ヤンキーとかほんま勘弁・・・・・」
「ああ、別にそれは大丈夫やと思うで。てか、あたし別に気にしてへんし。あのコらが勝手に怒りに行っただけやから。あたしが、見られてもうたーってゆったら、イキナリそっち向かって行ってん。いっこも頼んでへんのに(笑)」
「あ、そうなんや」
「うん」
「・・・・・ほなやっぱり嫉妬8割やったんか・・・」
「え?」
「・・いや、なんでもない」
「うん、だから、あたし全然気にしてへんから、大丈夫やで。」
「どうも助かります・・・・寿命縮まるわほんま・・」
「あたしら次の駅やねんけど、自分らまだ先?」
「あー、うん。もうちょい先」
「そっかー。あ、あそこあそこ!」
「・・へ?」
「向こうにめっちゃ高い塔見えるやろ」
「え。・・・・どれ?」
「あれあれ、あそこ!丸い建物の向こうにあるやろ」
「・・・・・・ああ、うん。・・・見えた見えた。あるけど、それがどうしたん」
「あの辺にな、あたしん家あんねん」
「・・・・・へ?」
「ええとこやろ」
「・・・・・・そうか(笑)?だだッ広いだけやん、この辺」
「えー、あんた、全ッ然分かってない!」
「何がよ(笑)」
「いや、だから、この広さよ。地平線まで見えるやん!めっちゃ景色ええやん!」
「ま、まぁ・・」
「あたしな、結構自分の住んでるとこ、好きやねん」
「そうなんや(笑)」
「だって、どんだけ走っても、めっちゃ広いねんで!」
「(笑)・・・・・あのー、おっしゃってる意味が、よう分からんのですけど・・」
「分かるやん!」
「(笑)」
「なによ!」
「ジブン、変な奴やな(笑)」
「・・・・ほほう、あんたもよう話してやらな、分からん人間みたいやな・・・・・。あたしの事バカにしてるやろ!ほなな、ちょっとあたしが、説明してあげるわ。あのな、めっちゃ広いところってな・・・」






「せやろ(笑)アハハハ!オモロイなー!ほんでな、・・・・あ、マー君。お前何しててん」
「もしかして、ケバ女に捕まってたんか(笑)」
「・・・・・・・いやー。・・・・」
「・・?・・・なんやねん」
「どないしてん。・・・・もしかして、またアイツらしょうもないこと、ゆうてきたんか?」
「もう女連中は降りたわ」
「あ、そうなんや」
「なんかゆうてたか?」
「いや、特に何もなかったわ。まぁ、おれがジャージとるときに、ちょっとイヤミみたいなことゆわれたけど」
「くあーッ。ほんまかなんなぁ、あのアホ女共!」
「まぁ、そんだけで終わったから、とりあえず良かったやん。まぁそやけど、これから仕返しみたいなんあるか心配やけどな」
「あ、それは大丈夫みたいやで」
「そうなん?」
「うん」
「お前が交渉してくれたんか!!」
「マジで!マー君やるやん!」
「あ、いやいや、おれちゃうねん」
「は?どうゆうこと?」
「いや、あのな、ジャージとって席戻るときにな、あのコと会うてん」
「あのコって誰」
「・・・・・!・・もしかしてトモコちゃん!?」
「うん」
「ちょー!!おれら呼べよぉ」
「いや、そんなに喋ってたわけちゃうんやけどな」
「そんなに喋ってたわけちゃうて、今の今まで喋ってたやろが!」
「コラ!!お前、飲み会のことといい、今回といい!!なんでお前は!」
「ちょ、ちょっと、これはたまたまやろ?!しゃーないやん」
「何喋ったんや?」
「うーん、まぁ、適当に。別に気にしてへんねんて。スカート覗いたこと」
「ホラ!やっぱり怒ってへんかった。やっぱりええ女やってんなー」
「そっかー。あー、良かった・・」
「ほんで、男に告げ口するんも、やめてくれるように、ゆうてくれるらしいわ」
「そうなんや!ほほお。まぁそれにしても!マサタカ君グッジョブ!!」
「・・・・ちょっと待ちなさいよアナタ。・・・まさか、そこまで話し込んで、まさか、まさかとは思いますけどね。えー・・」
「・・・!・・。い、いや、その・・」
「・・・・・。・・・!おいマサ、お前キサマ・・・・」
「しゃ、しゃーないやん!成り行きやねんから!!!向こうからメルアド交換しよゆうてきてんから!!」
「ちょっと可愛い顔してっからってイチビッてんとやってまうぞラァ!」
「会議や会議。ちょっともうこれは会議や。マー君」
「作戦会議や。どうやっておれらも便乗するかの作戦会議や!」






***






「・・・・・・・・フワぁ・・・・・。・・・・・。うーん!」
「ああ、午後ダルイわー。最近暑いねん、ほんま」
「・・・・・そやなぁ。ゆうてももう六月やしな・・・・」
「カズキどこ行った?」
「隣とかゆうてたけど。・・・・・・・あ、帰ってきたんとちゃう」
「あ、ほんまや」
「おい、マサ」
「・・?」
「まだメール続いてんのか、トモコと」
「え、続いてるけど。」
「ええのーマー君。あんな可愛いコとメル友なれて。お前ちゃんとこっちにも繋げてくれよ。内緒にすんなよ」
「分かっとるって」
「いやな、さっき教科書借りに行ってて、話しててんけどな。隣のヤスダゆうやつやねんけどな」
「・・・、あぁ、ヤスダ知ってる。顔デカイ奴やろ」
「コラ顔のことゆうな(笑)ええ奴なんや。まぁそれはええわ。あのな、ヤスダがな、尼出身なんやわ。ほんでな、先週の電車のことな、話してたんよ。ほならな、ヤスダが知ってるゆうてたんやわ」
「何を?」
「トモコとか、その辺の女のことよ。」
「ほう」
「ほんでな、どうやら、話聞いてたら、そいつらの高校、女子高な、アホらしいわ」
「へー。そうなんや・・」
「まぁ、そうやろな。アホそうやったし。ほやけど、トモコちゃんもアホなんか。黒髪清純系やのに・・・なんかショック!」
「いや、それよりもな、ショッキングやねんけどな、あのな、そのトモコって女な、ヤリマンで有名らしいわ」
「は?マジで!」
「それも相当らしいで。エンコーとかもやってるとか、男とすぐヤるとか」
「・・・・・・・」
「なんでヤスダがそんなこと知っとうねん。」
「いや、尼の奴らでは結構有名な話らしいわ。実際にヤスダの知り合いも付き合ってたらしいから、ほんまらしい。ほんでな、なんかな、携帯とかで、そういう掲示板があるんやと」
「そういう掲示板て?出会い系みたいな」
「いや、ちゃうちゃう、もっとエグイ感じの。なんか、たちんぼ的な掲示板」
「は?意味分からん。なんやねん、たちんぼって」
「たちんぼて、アレやん、よう天王寺とかに立ってるやろ、オバンが」
「ああ、なんか、やたら化粧濃い、オバンおるな。あれなんなん?」
「あれ、エッチするん待ってんねん」
「は?エッチ?」
「そう。エッチしてお金もうてんのやがな」
「ちょ、天王寺におるオバンて、もうお婆ちゃんやん(笑)」
「知らん(笑)、マニアがおるんちゃうか。その辺は知らんけどな、まぁそういうのがたちんぼゆうんやて。ほんでな、そういう情報を交換する掲示板があるらしいわ」
「そうゆう情報て何?」
「ほやからまぁ、ゆうたら、アレや、聞いたところによると、天王寺のフープあるやろ?あれのすぐ後ろの非常階段に座ってる若い女がいててヤらしてくれるとか、地下鉄心斎橋の東口便所の横に、いっつも立ってる女がおるとか、まぁ、そういう情報を交換する掲示板や」
「コエー、なんやそれ。・・・・・そんなん初めて聞いた」
「トモコもよう書かれてんのやて」
「・・・!・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・マジ?・・・・・」
「あぁ。らしいわ。掲示板にようトモコの情報のってんねんて。有名らしいわ。やらしてくれる高校生ゆうて。・・・・なんか、相当イタそうやで、あの女」
「・・・・・・・・・・」
「おい、マー君・・・・・ヤバいんちゃうん・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・やめといた方がええんちゃうか、マサ。ヤバイやろ、なんか。変なビョーキとかもってそうやん」
「・・・・・・・・それ、ほんまなんか?」
「は?」
「・・・・ほんまやで。ヤスダは信用できる奴や」
「・・・・・でも、実際にそうやって、ヤスダの友達の中で、たちんぼでトモコに会いに行った奴、おれへんのやろ?」
「それは・・・・。まぁ、そこまでは、おれも詳しく聞いてへんねんけど。」
「それやったら、まだ分からへんやん」
「ちょ、ちょっと、マー君、お前トモコに惚れてんの?なんかオカシイで?」
「別に、オカシイ事ないやん。」
「いや、オカシイってお前。なんでそんなにトモコに肩入れすんねん」
「そ、それは、なんつーか・・・」
「マサ、お前、そんな如何わしい女にくっついてても、エエことないって。自分を大事にせえへん女って、どっかオカシイんやって」
「カズキまでそんな言い方せんでもええやろ」
「いや、おれはお前のこと思てゆうてんねん。ああゆうタイプにのめり込んだらアカンて。電車で見たやろ?トモコのおれらに対して媚びた目線。お前みたいな素直な奴、適当に使われて捨てられるのがオチやって」
「おれもそう思うわ。やめとけってマジで。なぁ。お前も見たやんけ。京阪で見たやろ?やっぱ、そうゆう女やってんて、トモコは。」
「・・・・・・・・・・・・」
「カァー。お前はほんまに思い込みが激しくてかなわんなぁ。そんなに惚れてもうたんかいや」
「惚れたとか、そういうんとちゃう」
「惚れとうやないか!アホかお前!」
「なぁマサ。おれもノブも、お前のため思てゆうてんねんからな。誰も、お前、別に嫉妬してゆうてるわけちゃうで。あのケバ女みたいに(笑)いや、ほんまにトモコがええ女やったらな、おれらかて冷やかすけどな。ほやけど、今回はほんまや。冗談でゆうてるんとちゃうて。マジでお前のため思て、ゆうてんねんからな」
「・・・・・・・・」
「おい、マー君・・・・・・・・」
「なぁ、マサ」
「・・・・・・・・・・・・・ウルサイなぁッ。ちょっとほっといてくれや!」
「おい・・・・・」
「・・・・」
「アカン思たら、おれ自分でちゃんと引くから。・・・・・分かってるよ。・・・・でも、一応自分で話して決めるから」
「・・・・・・・・・・・。・・・・かなんなぁ」
「・・・・・・・・そっか。ほな、別におれもこれ以上ゆわんけどな。ほなけどな、マサ、まだ付き合うとか、そういう話やないからかまわんけどな。でも、お前、もし付き合うとかなったら、お前、その辺のこと、ちゃんと相手に話さなアカンで」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「マー君!」
「・・・・・・」
「・・・・・・・うん分かった」
「・・・・・」
「・・・・・よっしゃ。ほなええわ。おれらも、もうなんもゆわんわ」
「・・・・・・。うん。忠告サンキュー。・・・・・まぁ、付き合うとかはないと思うけど」
「何をえらそうに」
「(笑)」
「うるさいなー」






「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・。・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・あ。・・・・・・・・・・・・おーい!」
「・・・・!・・・(笑)・・・・・・・・・・・(手を振る)」
「・・・・(手を振り返す)」
「・・・・・・・・・・・・・・・もう来とったん?」
「・・・ううん、あたしも今来たとこ。てか、この辺あたしの庭やし」
「ほんまに何もないなぁ・・・。・・・そういや、ここの駅で降りたん初めてや」
「ウソや」
「だって、この辺用事ないもん」
「友達おったやろ?」
「いや、この辺の奴おらんかった。まぁ、たまたまなんやと思うけど」
「ほほー。ほな、紹介し甲斐があるってもんやわ」
「ホンマに何もないなー。何これ、広ッ!」
「そうや。この広さがええとこやねん!」
「広いて、何もないだけやんッ」
「・・・・・・スゥーーーー・・・・・なんもないんとちゃう、広いんやーー!!!!!・・・・ほら、こんなに叫んでも大丈夫やで!」
「(笑)・・・・・スゥーーー・・・・ほんまやなー!!!!・・・・おお!ストレス発散なるな!」
「せやろ!」
「・・・ところで、最初の名所はどこ?」
「お!ほな、さっそく行きますか!!・・・・・最初のスポットは・・・」
「・・・・・」
「あの三本並んだ鉄塔のとこや!」
「・・・・・・・・・・遠ッ!」
「よし、あそこまで走るで!」
「ちょー、そんな走ったら汗かくやん!・・・・・・・ちょ、ちょう待って、あ、サンダル脱げた、サ!ちょう待ってって、・・・イテ、イテテテ・・」
「はよおいで!・・はよせなおいて行くで!」

 




勇者たち










「・・・・・・・川田さま。川田さま」
「・・・ふ、ふぇ?」
「以上で終了でございます。」
「・・・・へ?・・・・・・あ、あーそう。う、ウーン・・(伸びをする)」
「わたくしのお話、ご理解頂けましたでしょうか?」
「へ?・・・・あ、あー、ウン。ウン。分かった分かった。つまりあれやな。ワシに世界を救え、ちゅうて頼んでるんやな」
「さようでございます」
「なるほどなるほど。えー、ほ、ほ、ほんで、そのー、あんたがくれるその剣と盾を使って、悪いやっちゃを懲らしめたらええんやろ?」
「さようでございます」
「ほ、ほんでや。・・・アレや、あ、あのー・・。一番肝心な、その、大変言いにくい事なんやけど・・、そのー、でっかい大物やっつけたら、そのー、なんちうか、その、女神さまと、・・・なんちゅーか、ごぞごぞ出来るゆう話・・」
「さようでございます」
「女神さんとワシの内緒の約束やね」
「さようでございます」
「ワシに任せてください!必ずや悪者を退治してきます!・・・・・では!」
「お待ちください」
「・・・・?まだなんかありますんで?」
「剣と盾でしめて合計15000円(税込)になります」
「・・・・は?!これ金取るんかい!」
「申し訳ございません」
「・・・・・・・・・ちぇっ。ったく、ぼろい商売しよんなー。こちとら頼まれてやってんのに。ワシが受けんかったら誰が受けるっちゅうねん、こんな阿呆みたいな依頼。ええ?・・・・・・くそっ。世界救うなんて、大変なことやねんぞ。・・今月ワシ厳しいのになぁ。まぁでもしゃあないな。この冒険終わったら、こんな美人さんと、あんなことやこんなことが出来るんやったら・・うふふ・・・・。おっし。なんぼでも悪いやつ、ワシにかかってこんかーい!!!よっ!ホラ!ここにお金置いとくでぇ!!」
「ふふ。頼もしいお方」
「当たり前じゃい!若い頃は浪速の虎ゆわれとったんじゃい!」
「それではまず最初にこの国の王さまにお会いください」
「はいよー!」





***





「すんまへん」
「いらっしゃい」
「あのー、ここ大阪城でっか?」
「そうですけど。あんたどちらさん」
「王さまいてはる?」
「今ちょっと出てってまんねん。なんや王さまがこれで(酒飲むしぐさ)
これがこれやそうで(小指立てるしぐさ、鬼の角のしぐさ)」
「あらー。そりゃえらいこっちゃ」
「昨日も新地で飲んでまんのやで。ほんまに、ウチの王さまには呆れるわ。ちゃんとこの国を導いてくれなあかんのに。さすがにとうとう嫁が呆れてしまいましてな、ほんで実家に帰ってもうたんですわ。ほんで今朝から王さまも嫁さん追っかけて実家に帰ってるんで」
「ごしゅうしょうさんで」
「ところであんた、誰やっちゅうに」
「あ、これは失礼致しました。ワテ川田言いまんねん。王さまに会うてちょっと直接話ししたいことがありましてな」
「ほー。それは急用なこって。せやけど、すんません。王さまは今日帰ってくるかどうか・・。嫁の実家が九州の田舎でしてな。」
「あー、さいですかー。・・・・・・ちょっとこれは困ったなぁ。(まぁ、行く当ては女神さんに大体教えてもうてるし、別に王さまに会わんでもええねんけどなぁ)」
「・・・・・・・?・・・もし」
「・・・・・なんですか?」
「その剣と盾、あんたどこで買いなさった?」
「・・・・え、こ、これでっか。えー、えーっと、・・・・うーん、こういう事は、ゆうてええもんかいな。やっぱり女神とか精霊ゆう存在は、内緒にしといた方がええんと違うやろか。はて、どうしたもんか・・」
「阿弥陀が池の女神にもうたんとちゃいますか?」
「!?・・・・・・・なんで分かったんですか」
「いや、正確には買うたんと違いますか」
「そ、その通りでございます」
「それで、この世界を救えゆわれたんとちゃいますか?」
「な!あんたなんでそこまで分かってなはる」
「・・・・・・・・・・・ハァー。」
「な、な。なんだんねん。その激しいため息は・・・」
「今週入ってあんたで九人目でんねん」
「は?」
「今週だけで九人目ですねやわ。世界救いにきた人」
「は?」
「いやだから、あんたが来やはる前に、もうすでに八人、来てなはるんですわ、うちに。そのー、何や。ゆ、勇者、ゆうやつか?」
「は?!」
「いやね、最近なんか多いなー思ててね、私も。いや、そりゃ、たまーにはいますよ。たまーには。それこそ、そうやなぁ、五年に一人おったらええ方とちゃいますか。あれですわ。そういうサイクルがあるんですわ。」
「・・・と、いいますと」
「いやいや、あのー、そりゃ、悪者の人たちおりまっしゃろ。世界を混乱に陥れる。はぁ。そうそう。世界を恐怖のどん底に陥れる、悪い悪魔いてるがな。うん、その人たちもね、なんも、ものすごい力持ってる分けではないんですよ。ほやからね、悪魔さんが世界を大混乱さしたときには必ず勇者が現れるんですけども、それこそ勇者は、悪魔が仕込んだ仕掛け、全部めちゃくちゃにしよるんですわ。ほんでね、めちゃくちゃにされたらね、アレね、なんも、悪魔がウーンゆうて、念力かなんかで、全部復活させよんと違いまっせ。」
「そうなんですか」
「そうや。あれね、勇者が壊した仕掛けとかいろいろありますがな。そういう壊されたモンをですね、まず現地調査してやな、ほいでそれを踏まえてね、悪魔の大将の人と、その下の近衛兵とか六魔人とか、そういう人らがおりますがな。あの人らがね、まず、設計から始めてね、ほんで、設計書が出来たら東大阪に指示出してやで、ほんで東大阪の中小企業の皆さんに頼んで、新たな仕掛けの施工に入るんですがな」
「ほー、ワタシ、そういう話、初めて聞きました」
「そうですよ。あの人たち皆一級建築士の資格持ってまっさかいな」
「建築士ってメチャクチャ難しいんとちゃいますの」
「そりゃもう、メチャクチャ難しいですよ。ほやけどね、こうやって頑張ってる側面は、メディアに放送されへんのですよ」
「許せませんな」
「おっしゃるとおりで」
「でも、王宮勤めのあんたがそないなことをゆうたら、立場上、具合悪いんちゃいまっか」
「あ!・・・・この話はまぁ、聞き流しといてください・・。まぁ、ほやからですね、何が言いたいかと言いますとね、一回勇者が壊したら、悪魔側さんが施工し直さなアカンからね、悪魔の国の建て直しが出来上がるまで、結構時間がかかるんですわ。ほいで、悪魔さんらが街を襲いにかかり始めるのは、それから、っちゅうね」
「なるほど。だから、その準備出来るサイクルがだいたい五年くらいですねんな」
「そうです。ほいでね、今年はね・・」
「そのサイクルではないと」
「そうですねん。今年はまだ、悪魔建築が完了する年とはちゃうはずやねんけど・・。今の時期に勇者が現れる事自体おかしいんですわ」
「・・・・アレ。せやけど、もうひとつ疑問があるんですが・・」
「なんで」
「あのー、ワシが来る前に今週すでに八人勇者さん方が来たゆうてましたけど・・。勇者ってそないにおるモンなんでっか?」
「それも謎ですねん。ワタシ、ここの番頭になってもう40年くらいになりますけどな、未だかつて勇者が複数おるなんて記憶にありませんわ」
「さいですか・・・。どういうことなんでしょう?」
「・・・いや、わたしにも分かりかねますわ。」
「そうですか・・・。なんや、よう分からんことになってきましたなぁ・・」
「まぁ、ワタシが知ってることはこれくらいですわ。」
「はぁ。・・・・・分かりました・・まぁ、ほな、適当に行ってきますわ。はい、有り難うございます、ほな」
「あー、ちょい待ちいな、そういえば、なんか、別のモンが今朝方、勇者来たやなんや、ゆうてたの思いだしましたわ」
「さいですか」
「ちょっと待ってくださいよ。おーい!タケー!!!おーい!おまはん今日勇者さんいらしたゆうてたなー」
「・・・・」
「ちょっとこっちこんかーい!・・・・・・・・・・おう、こっち来い。おまはん今日、勇者来たゆうてたがな、それ何時くらいか分かりますか?」
「はい。朝の十時くらいです。」
「どこに行くとか、なんかゆうてはりましたか?」
「王さまが留守ってゆうのを教えますと、そうですか、ゆうて、どっか行きはりましたわ。・・・・たしか、ミナミの方やと思います」
「はぁ、そうですか。・・なんやあんまりええ手がかりにはならんみたいですな。すんまへんなぁ」
「いえいえ、自分とおんなじ人間がいたゆうのは、手がかりにはなりますわ。どうも、ありがとうさんで。ほな!」
「お気をつけて」
「・・・・・・・・・・・へー。なんやなんや、一体どういうこっちゃ。えぇ?ワシの他に勇者があと八人も居てるのかいな。なんやそれ。えぇ。ほな、もう先に行ったそいつらが、悪魔王倒してもうてるかもしれへんやないか。えぇ。どういうこっちゃ。ほな、ワシ別に勇者にならんでも良かったんと違うんかい。よーわからんなぁ。ハテ。これからどないしよう・・。・・・・まぁでも、一回引き受けてもうたんやから、とりあえずは悪魔王の家まで行くとしよかな・・。ここにちゃんと地図があるんやさかい。えーっと、ふんふん、これによるとやな、えー、悪魔城は、平野区にあるゆうことやな。てことは、今日旅立った勇者もとりあえずはミナミに下った、ゆうことやな・・・。よっしゃ、とりあえず、悪魔城めざしましょ!」
「ちょっとすんまへん」
「はい。なんでしょう」
「あんた、もしかして、勇者さんでっか?」
「はぁ、そうですが・・。あんたは?」
「・・・・・・えー、恥ずかしながら、ワタシも勇者ですねん。」
「は?!」
「わたし、望月、言います」





***





「え、一体どういうこって・・」
「いや、せやから、わたしも勇者でんねん」
「はぁ、ほたら、あんたも女神さんに頼まれたんですか」
「そうですがな。」
「剣と盾」
「15000円(税込)は高いですがな」
「まったくですわ。え、と言いますと、あんさんも勇者のうちの一人、ゆうことですか」
「まぁ、多分そういうことになると思います」
「多分?」
「はぁ。いやいや、まぁ、あの美人の女神さんに頼まれましてな、世界を救えとかゆうて。丁度今朝、仕事行く前ですわ。阿弥陀が池の近くを通りましたらな、声が聞こえてきましてな・・・」
「はぁ、それ、わたいの場合と全くおんなじですわ」
「はい。それでですね、あとは、なんや「勇者が世界を救う」とかゆう実習ビデオ見せられてね、まぁ。なんといいますか、ちょっとその気になって来たんですけど・・」
「あはぁ、これは魂消た。ほんまに今朝のワタシとおんなじですわ、望月さん。あ、失礼、わたし、川田と言います。」
「どうも、こちらこそよろしく願います・・・。いやね、この手口に引っかかったのん、実は、わたしらだけとちゃいまんねん。他にもぎょうさんいてます。」
「はぁ、それはまぁ、聞いてますけど・・」
「おかしいや思いませんか?」
「へ?何がですか?」
「いやいや、勇者が何人もおるゆうことですがな」
「え、はぁ。いやー、まぁ、ウーン。どうなんでしょうな。ワタシにはよう分かりませんのやけど・・まぁ、そういうこともあるんとちゃいますか?」
「あのね、実はですね。わたし、もうすでに何人かの勇者とおうてますねん」
「え、そうなんですか!?」
「はぁ。ほいでね、先行した勇者の人たちに、事のあらましをね、大体聞いてきましたんや。ほしたらね、ちょっと、色々分かってきましてん」
「何が分かってきましたの?」
「はぁ。あのね、最初に先行して行った勇者の人たちね。すでに五人集まってたんですわ。今週の話ですねん。ほんでね、女神さんに言われたとおり、平野区の悪魔城に行ったんですって。ほしたらね・・」
「はぁ」
「案の定、まだ全然悪魔城できてませんでしたのや」
「あらま。そういえば、大阪城の番頭さんが、なんやゆうてはりましたな。施工サイクルがあるゆうて」
「そうですねん。地図にある平野区の悪魔城に行ってみたらしいんですけどな、ほしたらね、そこにはプレハブの小屋が一つあっただけなんですって」
「あらまぁ」
「ほんでね、なんやおかしいな思たらしいんですけど、とりあえず入ってみたらね。中に悪魔王とその部下の人らがおったんですって。ほいで、自分らが来たあらましなど、詳しい事話してみると、やっぱり悪魔城はまだ完成してないどころか、施工にも入ってないゆうんですわ。悪魔王が、もうちょっと待っておくんなまし、ゆうて、勇者方に頼んでお引取り願ったゆうね。どうやら、そういう話みたいですよ」
「おいおい、なんやえらいこっちゃでね」
「それでね、一つ興味深い話があって最近、ここニ三ヶ月、こうやって、間違った時期に来る勇者が多いんですって」
「はぁ。と、言いますと…」
「いやね、今まで、通常はですよ。勇者ってのは、世界が混乱に陥ったときに出現するモンですがな。つまり、世界が危機に瀕した後、要するに、勇者ってのは、世界の危機ありきの存在なわけですよ。」
「はぁ、なるほど」
「それはいつの時代もそうです。過去の歴史を紐解いても、これに反した勇者の例はないわけです。それやのに、最近は世界が危機でもないのに勇者がいるのがおかしい。川田はん。あんたやワタシみたいな連中ですわ」
「・・・たしかにそう言われてみますと、オカシイですわな・・。たしかに、世間の皆さんは普通どおり、学校行ったり仕事行ったりしてるのに、ワタシらだけ剣と盾持って世界を救うとか言うてるの、冷静になってみると、恥ずかしいですわな・・」
「そうでしょう。おかしいんですわ。・・・・・・ところで川田はん。ちょっとあえて聞いて見ますけど、あんた、ホンマに世界救おうと思うて、持ち前の正義感でもってこの依頼を受けなはったんですか?」
「へ?ど、どういうことでしょう・・」
「いやいや、なんと言いますか、この女神さまの依頼を受けなはったのは、なんや違う動機があったからなんと違いますか?」
「な、な、・・・・・・な、何を言うてるのか、わたしにはサッパリ・・」
「いやいや、別に隠さいでもよろしいやないですか。・・・あれやないですか、川田さん。あんた、女神さんと、ちょっといやらしい約束とかしまへんでしたか?」
「え・・・・・え、え、いやー、あーっと」
「何をええ年こいて恥ずかしがってますのんや。いやいや、それあんただけと違いますねん。わたしら皆、そういう約束してますねん」
「へ?!・・・・と言いますと、・・・・その、悪魔の親玉やっつけたら、あの美人の女神さんとあんなことやこんなことを・・」
「はぁ。そうですがな」
「え、あれ、わたいと女神さんの約束・・」
「いえいえ、あの約束、皆とやってますのやがな。あの女神さん」
「な、なんですってー!・・・・い、いやらしい女神さんやってんな、あの女。ワシとだけの約束とか言いながら・・」
「いやいや。あんた、なんかピンとがずれてますがな。そろそろ分かってきてもええと思いますねんけど。」
「へ、何がいな?」
「悪魔さんの方も、近頃勇者が尋ねてくるようになって、ちょっと難儀してるらしいのやがな。やっぱりあの人らはサービス精神旺盛やからね。ウチに来客がきたら、ただでは帰らさへんように、色々と楽しませようとしてくれるのやがな。ほいでね、そのせいで、悪魔城の設計がちょっと遅れたりしてて、困ってるんやって」
「はぁ」
「カー。あんた、まだ分からへんのかいな。つまりですな、悪魔さんの方も困ってるんですわ。ほんで、わしら勇者はどうですのや?やっつけるべき悪魔さんは居てへんのやで。にも関わらず、15000円払たがな。」
「あ、たしかに!」
「わしら勇者も損してるのですわ。ね、勇者側も悪魔側も、困ってる。一体この戦いは誰が得するんです?」
「・・・ウーン。そうですな、たしかに・・・なんなんでしょうな、わたいらがやってること・・」
「ほな、もうちょっと簡単に言いますがな。川田さん、あんたはなんで勇者になろうと思たんですか。ほんで、誰に損させられましたか?」
「・・・・。えー、そうですな。えー。わたしは、女神さんがごそごそしてくれるゆうて約束してくれたから、世界救うことにしました。えー、ほんで、女神さんから剣と盾を15000円で買いましたけど、どうやら無用の長物のようです。えー、女神さん・・」
「・・・・」
「女神さん!?」
「さいですがな。」
「・・・・め、女神さんがワルモンってことですか?!」
「はぁ。今までの話を素直に考えると、どう考えても、ええ位置におるのは女神さんですがな。なんでそんなことするんか理由はようわかりまへんけどな」
「え、え、なんでそんなことを・・・」
「さあねぇ。せやけど、悪魔を倒したら、ごそごそする約束までして、勇者と悪魔を混乱させようとしてるやなんて」
「ま、まさか・・そんな・・・ワイのごそごそが・・」
「とりあえず、ワシらがつきとめたんは、そこまでなんですわ。もう倒す悪魔が居てないもんやから、ほとんどの勇者の人は、諦めて戦いやめてまうんです。まぁ15000円まる損ですわな。ほやけど、わてら含めて、何人かは真相つきとめよう言いましてな。ほんで、先発の五人がまず悪魔さんと話してきてくれたんですねん」
「そうですか・・・・」
「・・・まぁまぁ、あんたの気持ちも分からんでもないけどな。わたしら皆そういう気持ちなんやし・・。気ぃ直しなはれ。ほんでな、ここからワテらの番なんやがな。」
「番と言いますと?」
「今からワテらが行って女神さんに詰め寄りに行きますのんや。・・と、ゆうても、もう先に別の二人が女神さんとこに出発してますよって」
「もう二人の別の勇者さんが?」
「そうです」
「そりゃぁまた。」
「そういうわけで、ほたらそろそろ、わたしらも行きましょうか。阿弥陀が池に」
「はぁ。了解です。ほなほな行きましょ。・・・はぁ、なんかよう分からんことになってきたなぁ・・」





***





「あ、川田さん、見てみい!今丁度、二人が女神さんに詰め寄ってるとこだっせ」
「ほんに!」
「・・・・・・・・ほな!アンタ、ほんまにそれだけの理由なんかいな」
「・・・・・はい・・・・・」
「かなんなぁ、ほんまに・・のう」
「ほんまに。まぁえらいことにならんで済んだけどやで」
「おーい、田中さんに長谷川さーん」
「おー」
「おー」
「どうもどうも。おー、やってまんな。ハイハイ。どうですか、具合は」
「上首尾ですがな」
「ほんまにこの女子、かないませんわ」
「ほほう。やっぱりこの女神さんが悪いやっちゃったわけやな。」
「ど、どうなりましてん」
「あ、田中さんに長谷川さん、こちら、今日新しく勇者になりました、川田さんです。」
「どうもどうも、川田でございます」
「田中です、どうも」
「長谷川です、まいど!そやけど、もう別にすることおまへんで」
「ど、どないなってまんの今?」
「いやいや、全部この女神さん、いや、どないゆうーたらええんかいな・・」
「あー、一応、お妃さまゆうた方がええんちゃうか」
「お妃さま?どういうこっちゃ一体」
「いやね、この人、王さまの奥さんなんや」
「は?!」
「奥さん?なんやて?奥さんて、たしか今実家に引っ込んでるんやなかった?」
「それですがな。この人、帰ってなかったんやわ。ウソウソ」
「は?なんじゃいなそれ」
「いや、そやからな、それもこれも、全部あれなんやがな」
「あれとは?」
「王さまに対する当てつけやがな」
「当てつけ?」
「そやがな。あのな、勇者を大量に出して悪魔にけしかけるんも、勇者からお金巻き上げるんも、全部この国、つまり王さまに迷惑かけるためにやったことやがな」
「迷惑って・・・なんでそないなことを・・」
「ほれ、あんた。もうちょっとなんとかゆうたらどないや・・。」
「(泣きしだれている)・・・・・・申し訳ありません・・・」
「はぁー。もう、さっきからずっとこんな調子ですわ。まぁでも、わてらも色々調べて分かったんやけどね、やっぱり王さまの酒癖が悪いらしいわ。後、これもね(小指立てて)ほんで、それで結構泣かされてたみたい。王さまにギャフンと言わせたかったんと違いますか」
「あ、あんた!そんなことのためにワタイらを利用したんですか!わ、わたいらはね!この国を救いたい一身でね、この依頼を受けたんでっせ!その気持ちを!馬鹿にして!」
「川田さん、ウソはいけまへんで(笑)」
「と、とにかく!あんたに預けたお金、返して下さい!!」
「・・・・」
「はよう!」
「川田さん、今すぐには無理みたいでっせ」
「なんでです?!」
「この人、今日の昼間に、わてらから集めたお金で、クシャミ爆弾買うてたみたい」
「クシャミ爆弾?」
「どうやらそれで、悪魔城の辺りを襲撃しようとしてたみたい。・・・しかもワテら勇者のせいにして」
「カー!かなわん人やなぁ、ほんまに。箱入りにもほどがあるんと違いますか!!」
「とりあえず、お金やその辺のことは王さまが帰ってきてからでよろしいでしょう・・・まぁまぁ、この人も、王さまの傍若無人振りに、ノイローゼ気味になってたみたいやね。あんまりきつくゆうのはやめたげましょう」
「カーっ!あんたらは人が良すぎますな!ほんまに!」
「川田さん、あんた女神さんとごそごそできへんかったからそんなに怒ってなはんのか?」
「当たり前ですがな!!」





***





「いやはや、まぁ、一件落着して良かったですね」
「まったくです」
「さっき番頭さんにも電話入れときましたわ。番頭さん、えらい謝ってましたで。すぐに王さまに連絡するってゆうてました。まぁ、これで王さまがちょっとでも反省してくれたらええんですけどな」
「悪魔さんの方にはワシがゆうときましたわ。有難う御座います、ゆうて。まぁ向こうさんは、サッパリしたモンですけどな」
「そりゃぁ、アッチは今再建で忙しいんでしょうな。それどころやないんちゃいますか」
「はー。まぁ、終わってもうたら、アッちゅうまでしたけど。なんか面白かったですな。」
「さいですなー。ワタシもちょっと、昔の若い頃の血が滾りましたわ!」
「ほえー。長谷川さん、昔なんかやってはったんですか?」
「へぇ。ちょっと空手かじってたんですわ」
「そりゃえらいモンですな」
「わたいなんか、今朝、望月さんに言われて着いて行っただけで、全然何もしてまへんがな」
「アハハ。川田さんは確かにそうですなー。でも一人でも仲間がおって心強かったですわ」
「そうですかー?(笑)」
「はぁ。明日からまたいつもどおりの仕事ですなー。」
「ほんまですなー。ほやけどいつかまた、世界が危機に陥ったときは、ワタイら呼んでくれたらええのになぁ」
「ほんまですわ!もう大体勝手は分かってるよって、わたいらに頼んでくれた方が、絶対ええ思いますけどな」
「そうやそうや!」
「勇者の実習ビデオも見たしなぁ(笑)」
「・・・・どうです、まぁ明日から仕事ですけど、今日はこのまま帰るのも悲しいですがな。とりあえずお祝いと我々の出会いをかねて、これから一杯飲みになど・・」
「お!ええですな!行きましょ行きましょ!」
「よっしゃ!今日は飲むでぇ」
「しかしお妃さん、ええ女やったなー」
「川田さん、もうそろそろ諦めなはれ(笑)」

 




天王寺動物園前










パチパチパチパチ。うう… …よかった、ほんまによかった。うう…。あぁ、よかったねぇ、マユミちゃん…。…………。うぅ…。…… …… ……、は?なんよあんた、ちょっと今ワタシ忙しいねんよ。うぅ…。よかったねぇ。よかったマユミちゃん…。ほんっまに良かった。おばちゃんほんまに嬉しいわ…。……、ちょ、っちょ、何よあんた、え?あの二人何してんのかって?何て、みた通りやないの、って、あんたちょっと邪魔。わたし今感動してるとこやねん、めちゃくちゃ感動してる最中やねんから、あんた、今わたしに話しかけんといて!……… ……、は?!もう、ひつこいやっちゃなぁあんたは。……え?一番品が良さそうやからアタシに聞いたの?アラ!ほー。アラそう、ほー。あんた中々見所あるやないの。え。そうでしょ。この人ら阿呆みたいな顔して、全然品のかけらもないやろ。あかんであんな人らに物聞いたら。ええ顔していろいろ教えてくれる思たら、いつの間にか通信販売の勧誘とかしだす人ばっかりやからね。な、そんな人に聞いたら、あんたみたいな優しそうな男の子なんか、一発で騙されてしまうんやさかい。ね、気ぃつけなあかんよほんま。そうかそうか、ほな、おばちゃんが教えてあげよ。ね、ほやけど、よう周り見たら、おっさんもおばはんも皆拍手してるね。笑てるね。そやなー。やっぱりええ話やもんなー。この場所におったら、そういう気持ちになるんやろなー。いやね、まぁ、あんた今来たところやから知らんと思うけど、ものの30分くらい前までは、この子ら喧嘩してたんよ。まぁ痴話喧嘩ゆう言葉はあるけど、この二人のはそんなもんでは収まらへん、えらい喧嘩や。ところでアンタ、今日は何しに来たん?天王寺動物園行こ思て?あらそう。ほたら、この二人と一緒やがな。この子らも天王寺動物園行こうとして、この入り口の前でこないに大喧嘩してたんやがな。へ?なんでそんなに知ってるかって?だってアタシここで店やってるからやないの。今日も昼間休憩やから店先で座ってお茶飲んでたんやがな。ほたらな、マユミちゃんとシゲヨシ君が歩いて来たんや。あー、今日は天王寺動物園行くんやなー思て、なんとなしに見てたら、ほらまた始まった。いつもの喧嘩や。いやいや、なんでわたしがマユミちゃんの事知ってるかゆうたらな、アパートの隣に彼女が住んでるんよ。ほやからもう、なんでも知ってんねん。隣から喧嘩の声聞こえてくる事もしょっちゅうや。ほんで、マユミちゃんから色々相談される事もようあるねん。うん。ほいでね、ほやから、わたしよう事情は知ってるんやけどね、まぁ、この話聞いたらもう、全員が全員、マユミちゃんの味方やと思うわ。うん、えぇ。いやいや、もう、どう考えてもシゲヨシ君が悪いんやわ。ほんまにこの男。だらしが無い甲斐性無い、すぐ浮気するわ借金するわ、中々働かんわで、もうマユミちゃんに世話になってばっかり。ええ。マユミちゃんは宗右衛門町でお水やってんねんけど、シゲヨシ君はもうヒモみたいなモンやな。えぇ。昼間からこの辺うろついて、立ち飲み屋でおっさんらとベラベラ喋ってるとこよう見るわ。ねぇ。マユミちゃんもあんな男のどこがええんかしらんけど…。ほなけど、まぁ性格はそんなに悪ないから、これまたタチが悪いんよね。道でアタシ見つけたら、「ユキちゃーん」とかゆって、アタシの方に近寄ってきて、パチンコで勝ったとかゆうて、桃の缶詰いっぱいくれたりするし、なんちゅーか、憎まれへんとこがあるんよねぇ。うん。顔も中々男前やし、笑ろたら割りとかわいいし、あたしももうちょっと若かったらどうにかなってた… ……ってのはどうでもええ話やけど、なんてゆうか、憎みきれへんところがあるんよ。マユミちゃんはそういうとこで結構悩んでたみたい。うん。まぁ、具体的ゆうたらあれや、まぁ、賭け事でお金がなくなったら、マユミちゃんにお金をせびったりしてね、それも毎回結構な額やったみたい。マユミちゃんはそれでもお金は稼いだら出来るから、別にかまへんゆうて、お金は渡してたみたいやけど。あたしは勿論そんなんやめとき、ゆうたよ。そんなもん、相手を甘やかすだけやねんから、絶対ええ事ないゆうて。ゆうてんねんけど、ほやけど、お金はずっと渡してた。まぁ、それはもう大負けに負けて、ええとしいな。惚れた女のする事やがな。ほなけどな。えぇ。アンタ!わたしもね、女です。若い時はお水してました。えぇ。ほなけどな、ええ、男の一番あかんとこはなんやと思う!?えぇ?あんた、男やったら、なんか分かるやろ?えぇ?あんた。なんやと思う?ちょっと答えてみいや。えぇ。うん。わーかーらーん????コラ。分からんとかゆうかあんた。カー!男はこれやからあかんねん、阿呆やねん。ケッ。そんなやから、女がいっつも泣かなあかんねん。可哀相な役するんはいっつも女に押し付けられるねん。えぇ?!あんた。なんでそこまで尽くした女が泣かされる事がある?可哀相やとはおもわんのか?この阿呆!浮気やがな、浮気!女が一番悲しいのは、大好きな自分の惚れた男が浮気する事やがな。えぇ!ほんま、なんで男ってのはすぐに次から次へと浮気するんかね、ほんまに。あたしもお水の頃にはどんだけ泣かされたことか。ほんまに男は嘘ばっかしゆうねん。お前が一番好きや、お前みたいなええ女おらへん、お前といっつも一緒におりたい。あたしが真に受けてポーっとなってる次の日には、別の女におんなじ事ゆうてるって。一体どういう思考回路してんねやろゆうて、あたし昔、男のアタマん中見たろ思て、穴開けたるゆうてネジ回し持って男の家に押しかけた事あるがな。えぇ。ほんっまに、なんちゅーか、男の性欲ほど阿呆なモンはないと思うわ。いや、ほんでな、シゲヨシ君もそういう男と変わらんのやがな。マユミちゃんはな、シゲヨシ君が浮気する度に、あたしのところ来て泣いたがな、おばちゃん、なんで男ってあないにすぐ浮気するの?ゆうて。えぇ。男って、あたしがこんなに好きな気持ち、いっこも分かってへんのかな、ゆうて。えぇ。そんな事ゆうて、女の子がワタシの胸の中で泣くんやで。可哀相やとは思わんか?ええ!あんたも男やったらなぁ、こういう女の一途な気持ち、ちょっとは分かるようになれ!分かったか!… ……そうか。ほなよし。ほいでや、でもな、あたし、前に一回、あんまりにも酷いから、シゲヨシ君に一回、ゆうてやった事あるのんよ。いや、浮気の事をな。シゲヨシ君、あんた、マユミちゃんみたいな可愛らしいええ子、泣かしたらあかんで、ゆうて。あんたみたいな男、こんなに愛してくれてる女の子、他にいてへんのやで、ゆうて。ゆうてやったんよあたし。ほしたらな、シゲヨシ君、うーん、とか、ハァ、とか。なんか、バツが悪そうな顔しながら、遠慮がちにボソっと一言、知ってます、ゆうて。ほんでトボトボ帰っていったけどな。なんか、ちょっとションボリしてるように見えて、こっちが悪いような、なんかこう、変な気分やったわ。なんてゆうか、あの子は、こう、情けない男の典型なんやね。ほんでや、まぁ、二人の間柄ってのは大体こんなような感じなんやわ。んで、さっきの喧嘩の話に戻るんやけどな。突然、喧嘩が始まったんや。天王寺動物園の入り口の前で。どうやら、話聞いてたら、シゲヨシ君が別の女とこの動物園に来てる事が分かったみたいやねん。分かったというか、シゲヨシ君がポロっと喋ってもうたんやな、きっと。ほいで、その女ってのが、前からポツポツと浮気で名前が挙がってたヨウコって子らしいわ。そりゃ、そんなもん、マユミちゃんからしたら、気ぃ悪いはな、毎回毎回、そんな浮気相手の名前が出てきてやで、せっかくデート来てやで、そこでも知らん女の名前聞いて、ねぇ。ほやけど、ここで大きな喧嘩になってもた原因は、シゲヨシ君もシゲヨシ君で、言い分があったからで、どうやら、シゲヨシ君は、もうそのヨウコって女とは何にもないってゆうて、譲らへんかったからやねん。まぁ、たとえその浮気相手と今は何にもないからって、彼女とのデート中に浮気相手の名前出すのはデリカシーの欠片もない話やけどな。まぁでも、シゲヨシ君はシゲヨシ君の言い分があって、動物園の前でえらい口論が始まってん。ほいでな、その頃にはもう、だんだんと周りに野次馬が増えるわ。わたしら、こういうの、好きやからな。飲み屋やそこらで暇してる連中の、ええ見世物やがな。いつの間にか、ちっちゃい子供らまで、隣の花壇の端に座って見物するようになった。ほんで喧嘩の方はというと、マユミちゃんはもう、女の件では堪忍袋の尾が切れたんやろうな、いや、切れたどころの話と違うな、もう、袋自体が破裂してもうたみたいやわ。そりゃぁもう、えらい怒りようで、女の子がこんなに大きな声が出せるんかゆうくらいの、大きな声で、泣きながらシゲヨシ君を平手で何回も叩いた。シゲヨシ君はシゲヨシ君で、こっちも大きな声で弁解したり、怒鳴ったりしてる。さすがに手ぇは出さへんかったけどな。周りの人間は最初は面白半分で見てたんやけど、だんだんとなんてゆうか、マユミちゃんの悲痛な感じに気おされてきてな、ほんで、その場から立ち去る人もおったわ。私もちょっとこれはアカンと思て、どうしようか思たけど、心決めて止めに行こうと腰上げたんよ。ほならな。次の瞬間、シゲヨシ君が、突然土下座したん。あの汚い地面。ほれ。えぇ。あんなきちゃないとこの地面でやで。びっくりしたがな。土下座。ええ男が土下座するなんて、あたし、久しぶりに見たわ。シゲヨシ君がな、マユミちゃんに叩かれながらな、ゆっくりしゃがみ始めて、土下座してゆうてん。「おれと結婚してくれ」マユミちゃん見上げながら。ほんでな、わたしもびっくりしたんやけど、ポケットから婚約指輪出して!しかもそれが、結構ええ指輪やったんよ!えぇ。まさかそんなモン出てくる思わへんがな。今の今まで、喧嘩してたのに。これにはさすがにマユミちゃんも面食らったような顔してたがな。ハトが豆鉄砲食らったゆうの?まさにそんな顔。最初にマユミちゃん、は?!ってゆうたがな。そりゃそうや。ほんで、シゲヨシ君が指輪のケース開けながらゆうねん。夜勤で金貯めてこうた、ゆうて。いやね、あたしもその話マユミちゃんから聞いてたんよ。最近シゲヨシ君が夜中に出て行って帰ってこうへん、ゆうて。本人にどこ行ったか聞いても、全然答えよらんゆうて。また浮気でもしてるんちゃうか、って、マユミちゃんが心配そうにゆうから、あたしもなんか、可哀相なってな。あんまりそこまで気ぃまわさんとき。いらん事考えてあんたが体壊したらアカンやろ、アタシはそれが一番心配や、ゆうたんやけどな。悪いけど、ワタシはシゲヨシ君が絶対浮気してると思てた。多分また新しい浮気相手のとこ行ってるんやろうと思てた。ほやけど、一々そんな事に気ぃ回してたら、マユミちゃんが疲れて体壊してまうがな。世の中には知らん方がええ事もあるんや、思てな、ほんでそういう風にゆうといたんやけど…。ほなけど、どうやら今回はアタシの考えが間違ってたみたいやわ。ほんでな、ほやけど、マユミちゃんは中々信じへんの。アンタ、どこでそんなモンパクッて来たの?ゆうて。全然信じよらへんのよ。ほしたら、シゲヨシ君がゆうのよ。夜勤で金貯めてこうたんや!どこそこの奴に頼みこんで、仕事回してもらえるようにしたんや。ゆうて。そこでまたちょっと喧嘩するんよ。ほなけど、これは本当の喧嘩と違うみたい。見てる方が恥ずかしかったわね。マユミちゃん、恥ずかしかったんよ。だって、あんなに怒ってたのに、突然プロポーズされてね。そんなん、突然どんな顔したらええの、って感じやもんね。どこでそんなお金稼いだの!から始まって、あんたがそんなに仕事頑張るわけがない、あんたみたいなグウタラな奴が仕事続くわけがない。思いつく限りの文句を大声でゆうてね。ほなけど、その声も5分も経たん内に小さくなって、消えてもうたよ。後は今あんたが見た通り。二人で手ぇ繋いで、マユミちゃんが大泣きしてるん。そりゃあんた、拍手も自然に沸いて笑ろてまうがな。えぇ。こんな情けないことありますか。可愛らしい。うん。ホラ、あんたもせっかく来たんやから、手ぇ叩いて祝ってあげなさい。えぇ?そんなんより、動物園入りに来たのに、こんなんやったら入りにくいって?阿呆!そんなんやから男はデリカシーがないゆわれるんや!